高柳町の植生 目次→項目クリック
 黒姫山を中心とする植生の概観 ユキツバキ・ブナ群落 
 クロバナヒキオコシ・ミヤマカワラハンノキ群落  アカソ・ススキ群落
 ヤマモミジ・アカイタヤ群落 植物群落の構造と遷移
 石黒城山の植生〔制作中〕 石黒の四季の花々
     

                 高柳町の植生

         1 黒姫山を中心とする植生の概観
 高柳町の黒姫山〔891m〕を中心に、鯖石川の上流域の山地を特徴づける植生は、尾根や比較的ゆるやかな斜面に成立する自然植生のブナ林ミズナラコナラアカメイタヤホウノキコシアブラ等を構成種とする二次的な雑木林と、山腹の急傾斜地や崩壊土上の低木林や草木群落などである。
 ブナ林は、黒姫山の白倉地区、磯之辺地区、石黒地区〜大島村嶺地区に分布していてこれらの殆どは人手の入ったブナ林である。 ただし、黒姫山頂から柏崎清水谷にかけてのブナ林が、最も規模が大きく自然に近い林である。
 
 
@ユキツバキ−ブナ群落 Aオオバクロモジシナノキ群落
Bヤマモミジ−アカイタヤ群落 Cコシジシモツケソウ−オオヒゲノカリヤスモドキ群落   Dクロバナヒキオコシ−ミヤマカワラハンノキ群落
Eアカソ−ススキ群落  Fコシジシモツケソウ−オオイタドリ群落
Gツリフネソウヨシ群落
 
 一方、雑木林も昭和初めまでは薪炭材としての伐採に加えて、スギの木の植林への転換が盛んに行われ、まとまったコナラ、ミズナラの林は余り見られない。さらに、多雪地で地形が急斜面の多い地形のため高木の生育が困難である。そのため低木林・高茎草原が多くみられる。また、このような斜面では根元の曲がった、いわゆる根曲がり杉が多い。
 また、鯖石川を境として、東側の栃ケ原・山中・塩沢一帯はにはかなりの樹齢の杉植林に覆われていて植物層は単調である。
それに比して、西側では黒姫山を頂点に標高が高く、地形も変化に富み植物層は豊かである。中でも鯖石川の源流石黒地区では柏崎刈羽の植物の秘境といえよう。
 しかし、昭和中頃から植林組合が中心となって雑木林・山腹の低木林・放棄耕作地を整理して杉の植林が盛んに行われたれ。黒姫山麓の板畑・中後・上石黒入山・寄合地区の風張りなどには見事な植林が広がっている。
 これらの植林の成長により、筆者の子どもの頃との山の景観とは著しい変容が見られる。〔筆者が、中学生の頃に刈羽村から赴任してきた教師に「石黒の山は雑木ばかりだ」と言われてが何か侮辱されたような気がしたものだが、それが率直な感想であったであろう〕
 ミズナラ林は居谷地区上の尾根筋に小規模な林が見られる。ここにはかなりの大木もみられるが規模が小さいため林内にはブナ林との共通種、ススキ草原の種、マント群落〔森林の周囲に発達する蔓植物や低木の群落〕の種が入り込んでいる。
 磯之辺登山口上には、アカメイタヤが優占する林が見られる。急傾斜地には雪圧や雪崩にに耐える幹のしなやかなヤマモミジミヤマカワラハンノキヒメヤシャブシなどの低木林が成立している。
 腐葉土や表層度が流されるような急傾斜地では低木の生長も困難で、ススキ、オオヒゲナガカリヤスモドキなど、多種類の草本から構成される群落が成立している。
 谷筋の崩壊土が堆積した、やや湿った土地にはヨシを中心とした草丈の高い草木群落が見られる。
 大野地区のススキ草原には、ススキ、ゴマナキイチゴクサボタンヨモギなどの草本の中に低木のタニウツギなどが多く進入している。
 草原はやがて低木林に、低木林は高木林へと移り変わる姿を示している。
 旧白倉地区の沢筋にはサワグルミを代表とする、オニグルミケヤキミズキなどの規模の小さな渓畔林が見られる。また、石黒川をはじめ沢筋などの湿った水の滴る崖には、タヌキランオオパギボウシダイモンジソウウワバミソウなどの植物群落が見られる。
 同じく、石黒などでは主に川・沢沿いにはサワグルミの小規模の林がみられる。
 黒姫山の岩場は、磯之辺地区上のべんがら岩、地蔵峠近くの手箱岩、小岩トンネル近くの蛇岩の3カ所がある。これらの乾燥した岩場にはメノマンネングサキリンソウ、ショウジョウスゲ、イワテンダ、ミヤマクルマバナなどの植物により特有の岩上植物群落が成立している。
 また、尾根筋に点在するアカマツは、石黒地区の特に大野・板畑などから中後・白倉などにも点在する。とくに地蔵峠を越える俗称松之山街道の道沿いには大木の並木が見られたが、昭和後期の大規模な松食い虫の発生で8割方が枯死してしまった。



           2 ブナ林−ユキツバキ・ブナ群落

 高柳町のブナ林は、黒姫山の旧白倉地区上、磯之辺地区上、黒姫山頂など標高600から870の尾根筋から山頂にかけての林と石黒地区、門出地区、栃ケ原地区など標高160〜340mの集落周辺のブナ林がある。
 このうち、尾根筋から山頂にかけてのブナ林は、ブナの純林を形成しており、林の中にもブナが見られることから、今後もブナの時代が続くことが予想され、極めて安定した状態にある群落と考えられる。
 樹高20m、植被率80%ほどで、林の中は亜高木が少なく、低木と草本がよく発達している。ユキツバキリョウブオオバクロモジヒメアオキヤマモミジタムシバマルバマンサク、ヒメモチ、ハウチワカエデ、チシマザサなど高い頻度で出現し、高柳のブナ林を特徴づけている。
 これらの種をみると。尾根筋の比較的土地が乾燥した貧栄養地に成立するブナ林〔マルバマンサク−ブナ群落〕に属する種が混ざっていて、両者を区別することは困難なためユキツバキ−ブナ群落とした。
 
 コナラ、ユキツバキ、ヤマモミジ、オオバクロモジなどの混交
 これに対して、標高160〜340mのごく低地の集落周辺のブナ林では、高木層にブナとホウノキコナラ、ミズナラアオハダの混交がみられ、オオカメノキ、マルバマンサク、ヒメモチ、ハウチワカエデ、ハイイヌガヤなど尾根筋のブナ林を特徴づける種が欠けている。
 また、クリコナラ、ホウノキ、エゴノキウゴツクバネウツギコシノホンモンジスゲなどミズナラ林、コナラ林に属する種や、ノササゲフジサルトリイバラなどマント群落を構成する種が入り込んでいることが特徴となっている。


      3 アカイタヤ林−ヤマモミジ・アカイタヤ群落

 黒姫山中腹の東斜面の尾根や磯之辺登山道上には、アカイタヤ林が分布している。
 高木層はアカイタヤが優先するが、時にはヤマモミジが優先する林も見られる。スミレサイシンミズキユキツバキハイイヌガヤアブラチャンエゾツリバナハナイカダを区別種としてヤマモミジ−アカイタヤ群落とした。


            4 ミヤマカワラハンノキ林
         
クロバナヒキオコシ・ミヤマカワラハンノキ群落

 ミヤマカワラハンノキ林は、傾斜が20〜40度の冬季は、絶えず雪崩の圧力を受ける斜面の下部に成立している。
 同じ低木林でもヒメヤシャブシ林は基盤の岩石が露出しているやや乾いた斜面に成立するのに対して、湿った崖斜面や崩壊体積地に成立していることが多い。
 樹高4〜5mのミヤマカワラハンノキにヤマモミジ、タニウツギが混じる。林床にはアカソクロバナヒキオコシ、アオイスミレなどの草本が群落区分種として生育している。
 
 ミヤマカワラハンノキとタニウツギ、ヤマモミジ、ヨシ等の混生
 同じミヤマカワラハンノキ林でも、崩壊斜面ではトリアシショウマケナシミヤマシシウドコシジシモツケソウホウチャクソウなどの種で群落が特徴づけられるのに対して、崩壊堆積土の畑が放棄された後に成立した林では、ススキツユクサカキドオシアサツキなどで特徴づけられる群落となっている。


          5 ススキ草原 アカソ・ススキ群落

 崩壊した砂礫土が堆積したところや、雪崩崩壊が激しく低木林の成立さえ困難な傾斜地にはススキオオヒゲナガカリヤスモドキオオイタドリアカソアンブアザミなど、草丈の高い草木が密生した群落が成立している。磯之辺地区のべんがら岩下の斜面にはこのような高茎草原が多く分布している。
 
 ススキ、ヤマハギ、ナンブアザミ混生地

 そのうち、最も広い面積を占めているのはススキ草原で、草木第T層は草丈2,0〜2,5m、植被率100%のススキが優先している。ススキの根本の草本第U層には、ススキ草原の構成種であるオカトラノオヤマハギアキカラマツなども生育するが、湿性立地の山地高茎草原構成種のアカソ、ナンブアザミほかの種が多い。アカソ、ススキを群落区分種としてまとめられた。
 放棄畑や造成地などには代償植生としてしばしばススキ草原が成立するがこれらは植物群落の遷移〔移り変わり〕途上の草原である。
 これに対して毎年定期的に受ける雪崩の圧力とつり合って自然度の高いススキ草原が見られるが、べんがら岩下の斜面に広がるススキ草原は後者にあてはまるものである。


             植物群落の構造と遷移

 黒姫山に生育している植物の集まり全体を「黒姫山の植生」といい、自然植生〔ブナ林、アカイタヤ林など〕と代償植生〔コナラ林、スギ林など〕に大別される。
 自然植生は、その土地の気候条件や地形・地質などに適応して成立している。日本列島は降水量が多く、比較的温度条件にも恵まれているため自然植生の大部分は森林〔自然林、原生林〕であり、わずかに海岸や湿原、高山などに厳しい環境下にある地域に草原や低木の林が成立している。
 植生のある一部分のまとまりを群落と呼ぶ。例えば、白倉地区上のブナ林は一つのまとまりある姿を示しており「ユキツバキ−ブナ群落」と呼ばれる。
 このブナ林の中に一歩踏み込んで観察すると樹高20mのブナが一番高く〔高木層〕、その下に樹高10mほどのブナが続き〔亜高木層〕、更にその下には樹高2〜4mのオオカメノキタムシバヤマモミジ等がみられ〔低木層〕、そして草丈0,7m前後のユキツバキチシマザサヒメアオキ、ホソバカンスゲ、ツルアリドオシ等が育成している〔草木層〕。地面には所々に朽ち果ててブナがみられ、その表面にはスギゴケなどの仲間で覆われている〔コケ層〕。
 
 黒姫山のブナ林の階層構造 〔高柳の植物より〕
 このブナ林は、上の断面図のような高木層、亜高木層、低木層、草本層、コケ層の5層に分けることができる。
 このような林の構造を植物群落の階層構造と呼んでいる。ミズナラやコナラなど、高木層の樹木の種類が異なると、内部の各階層の樹木や草木の種類も違ってくる。
 ブナの自然林はブナだけが独立して生育しているのではなく、林内の亜高木層、低木層、草本層、コケ層の植物と関わりながら成立しているのであって、下草や低木を刈るとブナそのものの生育に影響が出てくるのである。

 自然植生が人間の手が加わるなどして破壊されたあとにできた植生を代償植生という。耕作地〔田や畑〕の植生はもちろんのこと、私たちが日頃見慣れている杉林や松林も代償植生である。
 さらに、空地や休耕田の群落も、それらが生える以前に土地造成とか水田耕作という人手が加わっており、もしも、大昔から自然のままに放置されていたら自然植生〔我が国の場合は森林〕になっていたはずである。何らかの理由により自然植生が壊されたあとにできた植物群落は、長い年月を経てやがてその土地本来の自然植生へと移り変わる。この変化を遷移と呼ぶ。
 
   放棄田のススキ、ワラビ等の中にタニウツギなどの樹木が進入する様子
 造成地やスキー場、休耕地を放置しておくと、初めは一年草本や越年草〔二年草〕草本が生育する。やがて、ヨモギススキのような多年草草本が覆うようになり、一年草や越年草草本は姿を消し去りススキ草しばらくすると草原にタニウツギリョウブキブシなどの樹木が入り、繁り始めると光を遮られたススキは生育できずに姿を消し、やがて草原は原野に移り変わっていくのである。


              石黒の四季の花々

 3月下旬ともなると、ブナを初め広葉樹の林の木々の芽が赤みを増して多雪地帯の石黒にも春の気配が見られる。真っ先にマルバマンサクユキツバキキブシ、続いてアブラチャンなどの花が咲き出す。
 地上では、残雪の消え際からはフキノトウがのぞき、ホクリクネコノメソウオウレンスハマソウが、つづいてエゾエンゴサクオオバキスミレカタクリキクザキイチリンソウトキワイカリソウショウジョウバカクマテングスミレニリンソウなどの早春の花が次々と咲きだす。
 まもなく、ブナ林は他の樹林に先駆けて、時には林床にはTm近い残雪の中で柔らかな若葉を広げる。その他、ヤマハンノキミヤマカワラハンノキアカシデサワシバの長い花穂を下げる。
 一方、オオカメノキは残雪があるうちに花をひらく、それに続いてキタコブシタニウツギカスミザクラタムシバケナシヤブデマリミヤマガマズミ、などの白い花が咲き誇る。雪解け水流れて落ちる崖斜面にはアズマシロカネソウが可憐な姿をみせ、タヌキランが変わった花を風に揺らせる。地上では、オオバギホシミチノクヨロイグサミヤマシシウドがたくましい芽を出し、エチゴルリソウスミレヒメシャガチゴユリフタリシズカホウチャクソウユリワサビなどが花を開く。
 初夏の頃になるとミヤマガマズミサワフタギヤマボウシホウノキハクウンボクウワミズザクラエゴノキノイバライワガラミハリエンジュなどがこちらも白い花を開き。地上ではヤマホタルブクロハルジオンハナニガナなどが開花する。
 夏になると、ネムイヌエンジュタラノキハリギリの木々が花を開き、地上では、ヤマユリコオニユリオオマツヨイグサオオアワダチソウキオンクガイソウコシジシモツケソウノアザミヒルガオヤブカンゾウミソハギなどが色とりどりの花を開く。
 秋にはハギアキノキリンソウゴマナサラシナショウマツリフネソウノコンギクトリカブトサワヒヨドリナンブアザミミゾソバリンドウヨツバヒヨドリキバナアキギリヤクシソウヒガンバナケナシミヤマシシウドなどが咲く。
 霰混じりの冷たい雨が降る頃まで咲いている高茎植物はセイタカアワダチソウであろうか。

〔引用文献 高柳の自然・柏崎の植物・高柳町史〕