タムシバ
暮らしとの関わり
 石黒では「コブシ」と呼んでいたが、石黒にはコブシは数本しか見られない。(黒姫山を越えた鵜川にはコブシは多く見られる)
 タムシバは、マンサクキブシについで、残雪の中で咲き、春の到来を告げる代表的な樹木で昔から親しまれた。
 開花の様子から観る限り、以前(〜1980)は、釜坂峠西南側斜面に一帯にみられたが現在(2010)は個体数が激減した。しかし、数年の間に同一地点で個体数が大きく変動することは考えにくい。是非、近々、残雪のあるうちに斜面一帯を歩いて調べてみたい。
 葉や茎には芳香があり、冬季にタムシバのボイ(たきぎ)を囲炉裏で焚くと良い香りが家中に漂ったものである。
 また、コブシと共に方向指標植物といわれ、ふくらむ花芽は先が北を向くといわれる。
 たまたま、先月の日報抄に、浅田次郎の小説の中の南部藩武士が雪の中でさくコブシを例にあげて子ども達を叱咤激励する言葉が引用されていた。
「お前たちもぬくぬくと春ば来るのをまっているんじゃあねぇぞ。南部武士ならば、コブシのように雪をば割って咲げ。春に先駆け、そして世人にも先駆けて、あっぱれな花っこ咲かしてみろ」というような言葉であったと記憶する。

(写真上2005.5.8上石黒 右下2005.5.16大野)


                   

写真2011.4.21落合

                枝の様子

写真2011.4.21落合 

             雌しべと雄しべ

   写真2011.4.21落合 
解 説
モクレン科
 本州から九州の主に日本海側に自生する落葉の小高木。主に日本海側に自生する。
 花をつける枝先はコブシのように曲がらずに真っ直ぐに伸びている(左写真)。
 葉は互生し春にコブシの花に似た径10pほどの花をつける。コブシは花の下に若葉を一枚つけるがタムシバはつけない(葉の幅も狭い)。
 花弁は普通6個。雄しべは線形で多数ある。花托柱の下部に集まって付き、上部には雌しべが多数つく
(左下写真)
 果実は袋果が集まって長さ7〜8p。秋に熟して袋果が開いて赤色の楕円形の種子を散布する
(下写真)
 名前の由来は、葉を噛むと甘いことからカムシバ(シバは薪)と呼ばれ、それがなまったものと言われる。



      つぼみ

写真2011.4.21落合

        幹

写真2011.4.21落合

      袋果と種子

真2011.10.4落合

   落下し散布された種子
写真2011.10.4落合