ススキ | ||
暮らしとの関わり 石黒ではススキを「カヤ」と呼んだ。 カヤの語源は、「刈〔カ〕って屋〔ヤ〕根を葺く」意であるともいわれる。 広辞苑には、カヤとは「屋根を葺ふくのに用いる草本の総称。チガヤ・スゲ・ススキなど」とある。 昭和30年代まで石黒では、カヤは茅葺き屋根の用材、〔参照・屋根普請〕牛馬の餌、刈草、干し草、薪ニオの屋根など生活に欠かせない存在であった。 また、年中行事では、雄花祭りや十五夜祭りの幟〔神頴社のノボリ〕に飾るなど秋の花として昔から使われてきた。 子どもにとっても、カヤは親しい草であった。穂を手折り、指の上に立て歩いたり、葉を短く切り取り指で飛ばしたり、弓の矢を作ったり、草船を作り小川に流したり、ワラゾリの裏にさしてすべりをよくしたり、その他釣りの浮きに使うなど用途は多かった。しかしまた、鋭い葉で手を切ることも毎度のことであった。 今、秋の野山を歩いてみるとススキにこそ、秋の野草の王者にふさわしい風格があると思う。→参考画像→嶽・四季のススキ 子どもの頃、黒いススキの穂柄を口にくわえて横にひっぱり鼻ヒゲを描いてて遊んだことを思い出す。これはウィルスによる病気の一種で道端や田のクロ(畔)など刈られたあとに出るススキに多いとのことだ。(下写真) また、ススキの葉を巧みに三角チマキのような折り曲げて作るハマキフクログモの巣〔右下写真〕をを見つけると決まって中を開いて見たものであった。フクログモは日本産のクモとしては毒を持っていて噛まれると痛いといわれているが、噛まれた経験もなく噛まれたという話も聞かなかった。 似た植物にオギがあるが、株立ちするカヤの株は見かけによらず独立しているが、一見、各個がバラバラに生えていて独立しているように見えるオギやヨシは根茎がつながっている事は意外である。 参照→オギとの比較 参考ビデオ→秋風にそよぐ嶽のススキ また、ススキが秋の七草の一つであることはいうまでもないことであろう。 先日、ススキの花粉症についての新聞記事を読んで、花粉を顕微鏡で見てみたいと思っていたが、今日(2012.10.4)、石黒の道端に花の咲いた個体があったので封筒にいれて持ち帰った。今、顕微鏡で見ると真珠のような球状の花粉であった。→右下写真 参考スライドショー→石黒のススキ百景 写真上2004.9.25 上石黒嶺坂 早くも穂のふくらんだススキ 写真2015.7.14藤井 初秋のススキ 写真2006.9.2板畑 元中後集落入口 秋の夕空とススキ 撮影2005.10.4下石黒 子どもの頃に遊んだススキ黒い穂柄 撮影2009.6.9落合 成熟した穂のオギとの比較 撮影2009.11.29大野 大群落 撮影2008.11.13大野 水穴口(花坂新田水源付近から) 海辺のススキ 写真2012.10.8 笠島 市街地のススキ 写真2020.8.15松美町 昨年秋に刈り取ったカヤ 写真2005.5.28 下石黒
|
解 説 イネ科 日本全土の日当たりのよいところに生える多年草。しばしば大群落をなして山面を覆うこともある。〔左下写真〕 根茎は短かいが多数分枝して硬く節は緊密。 茎は直立して円柱形で節があり緑色で無毛。高さ100〜150p。 葉は互生し細長い線形で縁には細歯があってざらつく。中脈は白く〔下写真〕下部は長い鞘となって茎を包み下方のものには長い毛がある。 秋には茎の先端に花穂をつけ細長い十数本の短枝を中軸から出し黄褐色や紫褐色となる。 花穂〔短枝〕の各節には2個の小穂をつけ一つは無柄でもう一つは短い柄をもつ(左下写真)。 小穂の長さは3.5oくらい。被針形で下部に白い毛があって長さは小穂の1.5倍に達する。 内外の2頴〔エイ→イネ科やカヤツリグサ科の花を包む苞葉〕は洋紙質、護頴と内頴は膜質でやや紫色を帯び内頴の先端は深く2裂し小穂の3倍に達する芒がある。 この花穂をオバナと呼び秋の七草の一つに数えられる。 種子は晩秋になると種子が風に乗って飛ぶ。 名前の由来はスクスク立つ木〔草〕の意味など諸説がある。 穂の出始め 撮影2007.7.25下石黒 撮影2018.9.6寄合 茎切断面 撮影2009.6.9落合 葉表面 撮影2009.6.9落合 茎と葉の付け根 撮影2009.6.9落合 雄しべ 撮影2012.10.4下石黒 紅葉したススキも稀に見かける 撮影2009.10.23下石黒 成熟した穂 撮影2009.12.2下石黒 柄の長さの異なる小穂 撮影2010.10.29下石黒 初冬のススキ 撮影2010.12.1落合 花粉 撮影2012.10.4 ハマキフクログモの巣 撮影2012.6.18 地蔵峠上り口付近で ※写真拡大→画像クリック 写真提供 2021.9.4 有坂清隆 |