タニウツギ
暮らしとの関わり
 石黒では「ヒバシノキ」と呼んだ。株立ちする新枝は真っ直ぐで火に強いことから、その名前が着いたものであろう。また、このタニウツギの真っすぐな新枝を使って昔は稲こきの道具(コキバシ)を作ったものだと村の古老から聞いた。→参考資料
 また、「カジバナ」とも呼び、この花を家に持ち込むことを嫌う風習もあった。カジバナというの名前の由来は、開花期には山が火事のように赤く見える事によるものと思われる。(群生の様子)
 また、「タンジロウバナ」とも呼んだ。由来は、タンジロウは家畜などにつくダニの一種であるがこの木に多くつくアワフキムシをタンジロウと似ていることによる誤信であろうか。
 ちなみに、隣村の門出ではタニウツギを「ドウ〔朱鷺〕スネ」と呼んだというが、由来は下写真のような節部を関節として朱鷺
 
の脚に見立てたものであろう。このように朱鷺は、昔〔江戸時代〕から木の枝を脚に見立てるほど身近な鳥であったことは間違いない。
 だが、正月の鳥追い唄に「いっち(最も)、にっくい(憎い)鳥はドウ」と歌われていることから、想うに自然繁殖に初めて成功した今〔2012〕とは人々の朱鷺を見る目は大きく異なったものであったであろう。
 
 タニウツギは幹や枝が中空であるため薪〔春木〕としては余り適さない木とされたが、石黒には非常に多く自生しているため春に切り取り、ボイ(焚き木)として多く利用された。
 終戦前後の砂糖の無い時代は、ラッパ形の花をとって基の方を吸うと甘いため子どもたちにも親しみのある木であった。
 白花のタニウツギにも稀に出会うことがある。
 ちなみに筆者の見るところでは、いわゆる狂い咲きの最もよく見られる樹木はタニウツギであるようだ。今日(9.30)海岸で立派な花の一枝に出会った。しかし、珍しいというだけで美しいとは思わない。やはり、咲くべき季節にあってこそ見る人を感動させる。右下写真)

(上写真2005.5.26 下石黒)

ビデオ資料−タニウツギの咲く故郷石黒へYouTube
ビデオ資料−クマバチの盗蜜

             開花前

写真2015.5.1上石黒岩屋

           開花前の様子

撮影日2012.5.27下石黒

           花のつくり

撮影日2005.6.12寄合

          秋の果実

撮影日2004.11.6寄合

       さく果と翼のある種子

撮影日2009.11.30板畑 政栄

撮影日2011.11.11

        種子散布後の様子
写真2015.1.21田塚

             冬の様子

写真2006.1.8下石黒

         海岸のタニウツギ

写真2012.10.8笠島海岸
解 説
スイカズラ科
 北海道の西部から東北、北陸、山陰と、日本海側のいわゆる多雪地帯に分布する落葉低木。下部は枝分かれして株立ちとなる。木のは大きく白色
(下写真)。雪崩の起こる斜面に多く生える。
 葉は対生、長さ4〜11p上面には粗毛がつき下面は白い毛が密生する。先は鋭くとがり縁には低い鋸歯がある。
 花は漏斗状で若枝の先や葉の付け根に密集してつく。
 花冠は紅色、長さ3〜3.5p。筒型で上部が広がり先端はこ5裂する。雄しべは5個、雌しべは1個
(左下写真)子房は無毛かやや粗い毛がある。
 果実はさく果で種子を飛ばした後、芽吹き寸前まで枝に残る(写真右下)。
  生命力旺盛で且つ種子による繁殖力も強い。しかし、手折ったものは水揚げが悪く生け花等には向かない。
 名前の由来は谷間に多いウツギであることによる。
別名カテバナは凶荒の時に若芽を食べた事による。



       芽吹き-1

写真2016.3.26茨目

      芽吹き-2

撮影日2012.4.24寄合

       つぼみ

撮影日2005.6.13下石黒

      葉の形

撮影日2009.6.4下石黒

      葉裏の毛
撮影日2013.7.18下石黒

       若い果実
撮影日2013.6.30下石黒

写真2015.6.17田塚

        黄葉

撮影日2008.11.21下石黒

        樹形

撮影日2009.4.18 大野泊山

   白色の大きな髄

撮影日2011.11.27下石黒

     冬芽と葉痕
撮影日2015.1.21田塚

   狂い咲き-9月30日

写真2016.9.30裏海岸