オオミスミソウ〔スハマソウ〕
暮らしとの関わり
 石黒では「ジザクラ」と呼んだ。スハマソウは春に一番早く花をつける野草である。
 毎年丈余の雪に埋もれる豪雪地の石黒ではスハマソウの花はまさに春の到来を告げる女神であった。
 盆栽などに興味を持つ余裕もなかった昔の村人もスハマソウだけは鉢植えにして楽しむ人が多かった。
 しかし、石黒にはスハマソウは、もともと余り多く自生していない。個体の数では柏崎の海岸寄りの山地の方が遙かに多いだろう。色合いも海岸寄りの方が豊かであるように思われる。
 1983年頃、石地海岸近くの山で見た一面に絨毯を敷いたようなスハマソウの群生を忘れることが出来ない。それは、様々な花色の墨流し紋様染めを見るような光景であった。〔だが、5年ほど後に訪れたときには、周辺のどこを探しても見事な群生に出会うことはできなかった。林道の整備によりこの頃から大規模な乱獲がおこなわれたためだった〕
 とはいえ、石黒でも、ときには右写真のような美しい色合いの花に出会うこともある。
 最近では、これらスハマソウと呼ばれていた日本海側のものはオオミスミソウであるという説が有力であることから見出しは「オオミスミソウ」とした。→参考資料

〔写真2005.4.25下石黒 右上2005.4.18寄合 右下2008.5.12下石黒〕


 私たちが子どものころ〔昭和のはじめ〕はジザクラ〔スハマソウ〕は近くの山に沢山生えていました。早春の天気のよい日に「先生、ジザクラをとりに行こうよ」と言ってみんなででかけたものでした。
 この時期になると、残雪がかたくしまっていてどこを歩いてもぐることもなく自由に、みんなが跳びまわりながら先生を囲んで山に向かったものでした。
 山にはジザクラのほかにシュンランカタクリなどが咲いていました。とって来たジザクラは分校のまわりに植えたり、家に持ち帰って木箱を作って土を入れて植えて花を楽しんだものです。
今でも、この花を見ると「春だ」という喜びの気持ちが湧いてきます。
                 〔2009.3.24 居谷 田辺雄司〕

          花期のスハマソウ

撮影2007.4.21下石黒

        花のつくり(花弁はない)


         スハマソウの根

撮影209.5.12下石黒


解 説
キンポウゲ科
 本州と四国の山地の林の下などに生える多年草
 葉は根元から株立ちし斜めに伸び上がり長い柄がある。冬も枯れない。葉身は基部は心臓形で3裂し裂片の先は鈍形〔上写真〕。葉はやや厚く暗緑色。裏面は淡色で長毛が伸びる。
 花期のあとに新葉が群がり出る。
 花期は3〜4月。雪消えと同時に古い葉の間から10〜15pの長い花茎を出し先端に1個の花をつける。花は開くにつれて上向きとなる。花茎には毛が密生し〔下写真〕花の直径は1〜1.5p。
 花の下には緑色の総包が3個ある〔下写真〕。花弁はなく、ガク片が花弁状で6〜8個あり長楕円形で色は白、ピンク、青、紫と変化に富む。雄しべ雌しべともに多数ある。
 そう果は多数でき細かくて細毛があり下には宿存した黄色のがある。
 名前の由来は葉の形が三角形であることから、三角(みすみ)草、その大型の種の意味。
 別名スハマソウの由来は3つに分かれた心臓形の葉が州浜に似ていることによる。



      包と花柄の毛

撮影2009.3.8下石黒


撮影2006.4.16寄合

撮影2007.4.10大野

撮影2006.4.10寄合

    濃いピンク色の種
撮影2011.3.13寄合 政栄