キクザキイチリンソウ 〔キクザキイチゲ〕
暮らしとの関わり
石黒では「オトコカタコ」と呼んだ。カタクリアズマイチゲとともにいち早く春を告げる代表的な花である。ブナ林の縁などでによく見られる。
 石黒では淡い紫色系の花が最も多い。上の写真のように絶妙な色合いである。
 ギリシャ神話では、美の女神が流した涙がこの花に変わったと伝えられているという。また、古代ギリシャでは、この花の紫色が最も高貴な色とされたという。
 カタクリはその可憐な姿で人目を惹くが、キクザキイチゲはその色彩で人を惹きつける花であるように思われる。
 オトコカタコという方言は、カタクリの濃いピンク色に比べ白に近い事と、カタクリと同様に初夏には地上部が枯れてしまうことから、そう呼んだものであろうか。
 今日(2009.4.10)新潟日報の良寛コーナーに「何ごとも 移りのみ行く 世の中に 花は昔の 春に変はらず」という歌が紹介されている。この歌には「古里に花を見て」との詞書があるという。良寛は、国上山の道の土手に咲いているキクザキイチゲを見た時の感動を歌ったのではないかと私には想われてならない。〔※筆者はこの近くで暮らしていたことがあり、五合庵の近くをよく子供を連れて歩いた〕
補助画像1  補助画像2
資料-ふるさと石黒の春の妖精たち

(写真2005.4.30寄合)


     葉や茎が赤味を帯びたキクザキイチゲ

写真2011.4.21上石黒

咲き始める頃のキクザキイチゲ
写真2006.5.10落合
     
         小雪の春のキクザキイチゲ

  写真2009.4.6下石黒
(例年に比べ1ヶ月ほど早い花の最盛期)


     包葉のサヤ状と花柄の軟毛

写真2009.4.6下石黒

     そう果(未熟なもの)

写真2009.4.19下石黒

        フキノトウと並んで

 写真2009.4.6下石黒


コメント
フキノトウやカタクリなど、知る花の数はほんの僅かです。
四季を通して息を呑むほどの感動を覚える優美な草花を、何と多く見過ごして来たことか・・・・今、再び故郷の花々たちに会ってみたいという思いと、歳を重ねるごと感じるこの頃です。キクザキイチリンソウ・・・惹かれる花ですね!
                     2010.3.21受信 
解 説
キンポウゲ科
 北海道、近畿地方以北の落葉樹林の下や林の縁に生える多年草
 雪解け間もなく開花して初夏に地上部は枯れる。カタクリやイチリンソウ、ニリンソウ、アズマイチゲなどこの種の植物は「春植物(スプリング・エフェメラル)」と呼ばれる。周囲の他の草木が葉を広げないうちに充分な光をあびて開花し結実して、さっさと地上部は姿を消してしまう植物である。
 根茎は、やや太く長く地下を横にはい、細く長く節に線がある〔下写真〕
 根生葉2回3出複葉で長い柄があり小葉は羽状に深裂し裂片も切れ込む。
 包葉は茎の先にあって3葉が輪生3出複葉で形は根生葉と同じだが、柄の基部はサヤとなって広がる〔左下写真〕
 花期は3〜5月。包葉の中心から真っすぐに伸びる花茎を1本出して先端に花を1個だけつける。
 花の色は白から濃い紫色まで変化に富む。花径は2.5〜4p。直射日光に当たると平開し日暮れになると閉じる。花柄には軟毛がある〔左下写真〕
 花弁は無く、ガク片は10〜13個ほどである。まれに重なり花もある〔下写真〕。雄しべは多数あり黄色、雌しべも多数で卵形の子房には短い白毛が密生している〔下写真〕
 そう果は卵円形で細毛が密生する。
 名前の由来はキクの花に似た一輪草の意味。別名キクザキイチゲも「イチゲ」=「一花」である。



       若芽

写真2006.5.10下石黒

       つぼみ

 写真2009.4.6下石黒  

     美しいガク片

写真2006.5.4居谷

     重なり花

     写真2006.5.4居谷   

    太い根茎と節線

写真2009.4.29下石黒

      蕊と子房

写真2009.4.6下石黒