ナガハシスミレ(テングスミレ)
暮らしとの関わり
 ナガハシスミレは、石黒ではふつうに見られる。
 スミレは、種類も多く見分けが難しく今(2011.8.2)も2、3種しか名前が分からない。
 しかし、このナガハシスミレだけは中学生の頃から知っていた。天狗の鼻のように長い距があることで簡単に見分けがついたからだ。
 鳥のくちばしに例えた「ナガハシスミレ」が一般的な名前であるようだが、「テングスミレ」の方がその花冠の姿によりふさわしいと思う。
  
筆者はスミレの同定は特に苦手であるが、30年ほど前に何種類ほどのスミレを採ってきて、小型の植木鉢に植えて隣の家との境にある塀の上に並べて育てた。唯、育てたというだけで特に名前を調べることもないうちに花期が終わってしまった。
 ところが翌年であったか翌々年であったか、ふと塀の外側の社員寮の玉砂利の敷かれた幅3mほどの敷地を見ると何種かのスミレの花でいっぱいであった。それが、自分の育てたスミレの種子に因ることはすぐに理解できたが、一抹の罪悪感を覚えながらもその美しさに見とれてしまった。
 そして、その繁殖力には驚いた。咲いた花がすべて結実しても、たかが5株のスミレに過ぎない。
 今にして想うと閉鎖花が秋まで咲き続けて種子を飛ばし続けたのであろう。また、3uほどの範囲に広がって咲いていたことは、そこに蟻による散布も行われたに違いない。
 今でも、その時の光景を忘れることは出来ない。

写真2005.5.16上石黒 



          花のつくり

写真2005.5.16上石黒

     葉の低い鋸歯

写真2005.5.8下石黒 

               群生

写真2007.5.19下石黒 

解 説
スミレ科
 北海道南部から本州鳥取以北の主に日本海側に分布する多年草(太平洋側にも希に見られる)。山地のやや乾燥気味の林下や林縁に多い。
 地下茎は木化して肥厚し横たわり分枝する。
 花時の高さ10〜20p。
 根出葉はハート形で長さ2〜5p。質はやや厚く光沢があり縁の鋸歯は低い〔左写真〕。葉柄の長さは2〜5p。托葉は狭卵状楕円形で長さ1p。
 花期は4〜5月。花柄が立ち花は紅紫色で径1.5pほど。花の後ろの天狗の鼻のような長い(きょ)が目立つ、長いものでは2pに達するものもある〔上写真〕。花期を過ぎた後に閉鎖花をつける。
 名前の由来は長い矩を鳥の嘴や(ナガハシスミレ)天狗の鼻(テングスミレ)に例えたもの。



      長い距(きょ)

写真2005.5.8下石黒

       長い距

写真2011.5.6寄合

        托葉
写真209.5.15下石黒