https://www.youtube.com/watch?v=croRDwuGfdI

ハリエンジュ〔ニセアカシア〕
暮らしとの関わり
 石黒にはハリエンジュは稀にしか見られない。
 花は芳香があり美しいが、枝に刺があり厄介者扱いにされる木の1つである。
 筆者は、かつて畑の脇の径5pほどのハリエンジュを除去するに5〜6年もかかり手を焼き、執拗なほどの生命力に驚いたことを忘れない。
 柏崎海岸のクロマツの保安林の中には、クロマツの肥料木として混植されたハリエンジュが多く見られる(下写真)。柏崎海岸では比較的安定した状態にあると思われるが、柿崎海岸などではハリエンジュが優位を占めた姿がみられる。
 先日(2015.1.24)荒浜海岸の防砂林の散策道で筆者と同年配くらいの夫婦と出会い、防砂林のクロマツの苗を植えたころの苦労を聞かせてもらった。一時はニセアカシアの繁茂に悩まされたという。手入れを怠ると、クロマツは成長促進のために混植されたハリエンジュと支配権をかけて戦うという事態に至る。今はクロマツが径30pほどに成長し安定したが、数年に一度は下刈りをしているようだ。(ちなみに、当初はこの散策道は「ハマナスロード」と名付けたが植えたハマナスはほとんど育たず、育った木にも花つきがひどく悪いとのことであった。おそらく日当たりの悪さが原因のひとつであろう)
 2013.11.13に新潟日報では新潟市北区鳥見町では、保安林のハリエンジュがクロマツに対して優位をしめたものであろうか。生育を妨げる等のため2ヘクタールにわたり伐採したとの記事が見られる。
 柏崎市では地元産のニセアカシアの蜂蜜が販売されるほどであるから主に海岸線の上越市柿崎方面に相当数自生しているのであろう。
 また、柏崎市街地周辺の山沿いのハリエンジュは極めて稀にしか見られない。筆者は、数年前から、種子を観察したいと思っていたが、石黒ではその機会に恵まれなかった。ようやく今年(2011)に市街地付近の畔屋で種子をつけた木に出会うことが出来た。果実のサヤを開いてみるとサヤの幅に比べてひどく貧弱な種子が姿を現した。不稔粒と思い他の種子を採って確かめたがすべてが同じであった。
 サヤに比べて種子がこのように小さいのは、サヤについたまま風に飛ばして散布するためではなかろうか。木の下に落下したサヤが少ないことからもその可能性は高い。
 (※これに似た果実をつける木にサイカチがある。サイカチは石黒にはないが隣の鵜川の女谷の人家の庭に大木がある。果実の写真を探したが見つからない)
 また、しばしば見かける実生が数本密生していることが多いことも関連生があるように予想される。
 その他、落下した種子を鳥が食べて広く散布することや鞘が舟の役目をして遠くまで水で運ばれ散布される様子も想像できよう。
 上記のような推測を昨年〔2011〕したが今日〔2012.7.5〕、鯖石川河口に生えていた大木の果実を望遠レンズで撮影したところ下写真のように丸々と充実した豆を内蔵したらしい立派な鞘が映った。
 もしかすると今まで見てきたものはすべて未熟の種子であったかも知れないと焦った。しかし、WEV上のデータを当たってみると鞘が種子散布に大きな役目を果たしていることは確かの様でほっとしたところだ。今後、種子散布について是非調べてみたい。
 その後、裏海岸で鞘が大きく膨らんだハリエンジュの豆果に出会い、採取して割ってみると種子の大きさはやはり変わりない貧弱なものであった(写真右下)。どうやら丸々とした種子はないのであろう。
 ちなみに、一般にアカシアと呼ばれ、「アカシアの雨のやむとき」、「この道」などの歌詞に登場するのはすべてニセアカシアの花であるといわれる。
 今年(2015)の気候は異常なのか、大寒に雨が降ったり晴天が続いたりする。かと思うと石黒などでは一晩に1m余りの降雪がある。幸い市街地はほとんど雪が積もらない。お陰で大寒入りのころから6回ほど自転車で周辺の山に冬芽の観察に出かけることができた。2月12日には海岸近くでハリエンジュの冬芽を観察した。大木の根元から伸びた若木には鋭く長いトゲが見られるが大木上部から出た枝のトゲを望遠レンズで観察すると短く先端も優しい感じである(下写真)。地上近くで葉を展開する若木はもともと草食動物から葉を守るためのトゲであるのだろう。
 今朝(2015.6.20)、荒浜海岸に海浜植物の撮影にでかけた。防砂土手の後方に生えたハリエンジュが枯れて骨の如き白い幹が目立った。さすがのハリエンジュもここまで海に近づくと塩害に犯されるものと見える。特にこの辺は真冬に「風が舐める-この地の方言」ところで昨年の2月、砂上の風紋を観察した記憶かがある。
ビデオ資料→花期のハリエンジュ

〔写真上2006.6.7上石黒 右 2006.6.13下石黒〕


             開花初期


写真2014.5.18畔屋

            ハリエンジュの花

写真2006.6.7下石黒

               花拡大

写真2006.6.7下石黒

                葉の形

写真2005.10.7上石黒


       花期のハリエンジュ(市街地周辺)
写真2011.5.2 畔屋  冬の様子→参考画像クリック

              花 期

写真2012.5.27市街地

             果実期へ

写真2015.6.6安政町

            花から果実へ

写真2015.6.28鯖石川河口付近

          果実期と(豆果)


写真2011.9.27 裏海岸

          繁殖力旺盛なハリエンジュ

写真2012.10.3荒浜海岸

        幼木のトゲは鋭く長い
写真2015.2.12赤坂町

  防砂林の先端で塩害で枯れたハリエンジュ

写真2015.6.20荒浜海岸

解 説
マメ科
 北アメリカ原産の落葉高木。明治の初め頃日本に渡来した。
 その後、成長が早いために荒地の緑化資材や、海岸のクロマツの砂防林に肥料木として植えられた。しかし、海岸ではクロマツの枯れ死などで大木化するものも多い。
 また、花は美しく芳香があり街路樹や公園樹として植えられている。その他、蜂蜜源としてハリエンジュの果たしている役割は大きい。燃料材として優れている。
 しかし、現在は他の植物を圧倒する繁殖力と駆除の難しさなどから、植生を乱す恐れのある植物として要注意外来植物リストに挙げられ注目されている樹木である。
 また、根の張りが弱く倒れ易い木としても知られている。
 高さ10〜15m、直径80〜120cmにもなる。
 樹皮は褐灰色で縦に深く割れる。
 葉は互生し長さ20〜35cmの奇数羽状複葉で小葉は7〜19枚(左下写真)。葉柄の基には托葉が変化した一対の鋭い刺がある。
 花期は5〜6月。長さ10〜15cmの房状の花をたれさげる。
 花の形は蝶形で白色(左下写真)、芳香があり良質な蜜源植物の1つ。また、花は天ぷらなどにして食用となるが、花以外は有毒とされる。
 果実は豆果でサヤの長さは7〜8cmで小さな種子を4〜7個ふくむ(下写真)
 名前の由来はアカシヤ〔日本には自生せず、花も色は黄色で形も異なるが・・〕に似ているため。また別名ハリエンジュはエンジュに似て刺があることによる。



       新緑の頃

写真2012.5.15畔屋

   つぼみから開花へ

写真2014.5.19裏海岸

     雄しべと雌しべ

写真2012.5.28市街地

      幼果

写真2015.6.6安政町

     ハリエンジュの幹

写真2005.10.7上石黒

      老木樹皮

写真2014.2.3赤坂山

       幹切り口
写真2014.10.西港町7

    ハリエンジュのトゲ
写真2006.6.7下石黒

      幼果
写真2015.6.28安政町

    果実(豆果)と種子


写真2011.9.27 畔屋

 外見上は充実しているが・・・

写真2011.10.7鯖石川河口付近

  葉痕の下に隠れた冬芽

写真2015.1.25日吉町

  成長による葉痕の変化

2015.2.12赤坂町