ヤブカンゾウ
暮らしとの関わり
 古老によれば、石黒では「ギシギシ」と呼んだというが筆者は子どもの頃から聞いた記憶はない。「ギシギシ」はぎっしり混み合った花弁の様子に依るものであろうか。
 もともと故郷石黒では、あまり見かけない野草の一つだ。たまに見かけるのは田畑の周囲りなどで、深山では筆者の調査の限りでは見られない。草刈り機や除草剤が使われる以前、カマを使って田のクロ(畔)なぎが行われた時代は自生しているヤブカンゾウやコオニユリヤマユリを残しておく人が多かった。
 ヤブカンゾウは、梅雨が明けてニイニイゼミが鳴き始める頃に咲き出す夏の花である。野草としては鮮やかなオレンジ色の花は草ヤブの中に咲いていてもよく目立つ。
 上の写真の花は板畑集落から嶽に向かう道下の草ヤブの中に咲いていた。
 牧野植物図鑑では「ワスレグサ」と表示され、「中国ではこの花を見てその美しさに憂いを忘れるという故事あり」と記されている。
 若い茎葉は山菜としてキ食べられるが、酷似する有毒のキツネノカミソリに注意。キツネノカミソリは葉の先端が丸みを帯びることで区別できよう。

(写真上・右下2005.7.25板畑 右上2005.6.3落合


            芽の出るころ

 写真 2010.4.29 下石黒

          4月の頃のヤブカンゾウ

写真2009.4.18泊山

                 花 期

写真2011.7.13下石黒


               花期-2


写真2010.7.17板畑


            花断面

写真2010.7.17板畑

         
ヤブカンゾウの根と葉

 写真2009.5.19落合

             群  生

写真 2015.7.5 北条

解 説
ユリ科
 日本全土の田の土手や草ヤブなどに自生する多年草
 高さは30〜40p。根は黄色で末端は往々塊根状となる。(下写真)
 根茎から横につる枝を出して繁殖する。
 葉は2列に出て互生し下部は重なる。葉は広い線形で時には幅が5pにもなる。(右上写真)
 夏に茎の先端に橙色の花(内側の花弁はオシべが変化したもの)をつける。花は径8pほどで八重咲きがふつうである。花は1日花。 
 若葉は山菜とされる。
 果実は3倍体のためできないため根茎で繁殖する。
 牧野植物図鑑では、和名をワスレグサ、別名をヤブカンゾウとしている。名前の由来はヤブに咲いていることによる。



      塊根状の根
写真2009.5.19落合

    
ヤブカンゾウつぼみ

写真2005.7.18大野

        花  冠

写真2010.7.17板畑

        花 弁

写真2010.7.17板畑

    花弁化しためしべ


写真2010.7.17板畑

     しぼんだ花

写真2010.7.17板畑

     種子はできない
写真2015.7.5北条