ヒガンバナ マンジュシャゲ
暮らしとの関わり
 石黒では、ヒガンバナは希にしか見られない。子どもの頃から滅多に目にしない花の一つである。
 上の写真は落合集落で撮ったもの(2005)であるが明らかに最近になって植えられたものである。
 だが、2007年の秋、すでに十数年前に離村した家の屋敷跡の草藪で花を咲かせているヒガンバナを見て、その生命力に驚嘆した。
 歌心のある人なら一句が即座に生まれそうな情景であるが、和歌の心得のない自分は唯、花の美しさに感動しつつ、かつてここに住んでいた家族のことを想った。
 今は遠い異郷に暮らし年老いて望郷の念にかられることもあるだろう。時には懐かしい茅葺屋の我が家を夢に見ることもあるにちがいない。そこには、庭先に植えられていたヒガンバナが登場しているかも知れない。→屋敷跡に咲く彼岸花
 父母若く我いとけなく曼珠沙華   中村汀女
 実に、昭和40年代の過疎化による石黒の離村戸数は想像を超えたものであった。→石黒の人口と戸数のの推移

 またヒガンバナが、南北に長い日本列島全域で彼岸の中日頃、いっせいに咲くことも考えてみると少し不思議なことに思われる。

(写真2005.10.8落合)


                 開花へ

写真 2018.9.15 松美町

         秋の陽ざしの中のヒガンバナ

 写真2007.10.7下寄合

          草やぶの中のヒガンバナ

  写真2010.10.11下寄合

             花のつくり

写真2009.9.20寄合

             花冠の全体の姿

 写真 2018.9.18 松美町

     果実期に入る頃に根元に葉が出始める

写真 2018.10.1松美町

解 説
ヒガンバナ科
 本州・四国・九州に分布。葉と花が別々の時期に現れるいわゆる冬緑型の多年草。人家の周囲の墓地、堤防などに多く見られる。
 根茎はラッキョウ形〔左写真〕外皮は黒い。
 葉は11月ごろに出る。線形で鈍頭〔下写真〕、厚く艶やかで長さ30〜60p。翌年の春には葉は枯れる。
 花期は9月。秋、まだ葉のないうちに鱗茎から30pほどの1本の茎を出す。その先にふつう5〜6個の花を横向き輪状につける。総包片は2〜3p、披針形で薄膜質〔上写真〕
 花被は6片で細長く外に反り返り花被の縁はねじれる。〔上写真〕花披片の長さ4p、幅5〜6o。
 雄しべ6個と雌しべは著しく長く出て花被と同色。子房は下位で緑色成熟しないので種子は出来ない。花が終わると多くの葉を出す。葉翌年春には枯れる。
 球根はアルカロイドを含み有毒であるが水にさらし飢餓時の救荒植物とされたという。
 名前の由来は咲く時期が彼岸の頃であることによる。



       開花前
写真 2018.9.17 松美町

        花序

写真 2018.9.17 松美町
 
      果実期へ
 写真 2018.10.1 松美町

     鈍頭の葉

写真2009.12.6寄合

   花後の葉〔初冬の頃〕
写真2009.12.6寄合

      全体の姿写真2009.12.6寄合