エゾエンゴサク | ||||||||||
暮らしとの関わり 豪雪地の石黒では、カタクリやキクザキイチゲ、アズマイチゲなどと共にいち早く春を知らせるうれしい花の一つである。 故郷の家の周りでもよく見られた。いかにも繊細できゃしゃな印象を受ける草で、春の妖精たち(スプリング・エフェメラル) を代表する植物の一つである。花の色が個体によって多様なことも、この草の特色である。 ところで、エゾエンゴサクは、自分(筆者)が3〜4才のころ、石黒の生家の庭先で、心地よい春風に揺れる姿を幼児の低い目線でとらえ脳裏に刻んだ最初の野草であったような気がしてならない。 ちなみに、先日(2017.3.5)詩人でアイヌ研究家の更科源蔵という方の「エゾエンゴサク」という題の随筆の書き出し文「山奥の開拓地に生まれた私が物心がついて美というものに初めて心をひかれた最初は、この花だったように思う」に接して共感を覚えた。 まさに、80年もの年月を経た今も、その花を見つめると魂の深奥の原風景の中に引き込まれるように感じることから自分にとっては並みの記憶ではない堅くと信じている。 また、このサイトのための観察と撮影を始めてから、根茎の先に小さな球根があることを発見して驚いた。 ちなみに、よく似たヤマエンゴサクがあるが、こちらは、花の下の苞の先に切れ込みがあることで区別できるという。下比較写真参照 いまだエゾエンゴサクの群生には出会ったことはない。5〜10株ほどの集まりは時々見かけるが・・・。その後、2015年に大野集落の黒姫神社付近で大分大きな群生に出会った。下写真 石黒にはエゾエンゴサクの方言名は伝わっていない。 ※ビデオ資料-ふるさと石黒の春の妖精たち (写真上・右上2005.5.12 右下2005.5.18) 雪消えとともに発芽 写真2015.4.24大野黒姫神社横 つぼみの頃 写真2015.04.24 大野黒姫神社 開花期(群生) 写真2015.4.24大野黒姫神社横 エゾエンゴサクの薄紫花 撮影2009.4.10下石黒 エゾエンゴサクの赤紫花 撮影2005.5.11下石黒 絶妙な色合いの花 撮影2009.4.6下石黒 開花からの経過に見られる色の変化 写真2019.4.23下石黒筆者の畑縁 エゾエンゴサクとヤマエンゴサクの苞による区別
果実期-1 撮影2010.5.18下石黒 種子とアリの好む物質 (上写真矢印) 撮影 2010.5.18 落合 実生 写真2009.5.1落合 |
解 説 ケシ科 北海道・中部以北に分布。主に、落葉高木の林床などやや湿り気のあるところ生える多年草。 もとは中国より薬用植物として持ち込まれものといわれる。 地中に径1pほどの塊茎をもつ(下写真)。アイヌの人たちはこの塊茎を「トマ」と呼んで、茹でて干したものを貯蔵しておいて食べたという。この根茎から5〜10pほど上のほうに長卵形の鱗片がありその腋から分枝している(下写真)。 草丈10〜20p(北海道のものに比べ本州の種は丈が低いといわれる)。 葉は葉柄があり小葉3を 枚からなる複葉。(下写真) 花期は4〜5月。茎の先に2p前後の花をたくさん付ける。花の色には変異が大きく、青紫、赤紫、白と、さまざまな色の花をさかせる株が入り交じって群生していることがあります(左下写真)。 花は唇形に開き、他方は真っ直ぐかやや湾曲した円柱形の矩(きょ)となっている。 6個の雄しべは花糸が合着して2組になっている→両体雄しべ。 包は卵状長楕円形でヤマエンゴサクのように分裂しない(右最上写真)。 初夏にサヤ状の実(上から2番目写真)がつき中の種子を散布した後に地上部は枯れる。散布され種子にはアリの好む物質(左下写真)が付着していてアリによって運ばれる。 ウスバシロチョウの食草。 名前の由来は、地下茎を乾燥したものが漢方薬の「延胡索」で、この名前がそのままついた。 残雪を突き破って 写真2015.4.24大野 芽吹き進む 写真2015.4.24大野 分岐点にある鱗片 撮影2009.5.19下石黒 開花直前 撮影 2010.5.18 落合 花 撮影2010.4.30下石黒 背後から花冠の様子 撮影2013.4.12下石黒 山道の斜面に生えている様子 撮影2013.4.12下石黒 花期から果実期へ 撮影2018.4下石黒 果実期-2 撮影2012.5.20下石黒 エゾエンゴサクの葉 撮影2009.4.24下石黒 エゾエンゴサクの塊茎 撮影2009.4.24下石黒 全体のつくり 写真20105.5.5上石黒 |