シナノキ | |
暮らしとの関わり シナノキは石黒では、しばしば見かけるという程度に自生している。 古老の話では、石黒では昔から皮を荷縄やミノ作りなどに利用したということだ。また、まな板材として山師が買い付け入ったこともあるという。その他の樹皮専門の買い付けの山師も来たという。 村人が使う樹皮は、最も水を吸い上げる6月頃に直径10〜15cmほどの若木の皮を立ち木のまま根元の樹皮にナタで傷を入れて皮を裂き引っ張って剥ぎ取った。〔右下写真〕 それを家に持ち帰り、川かタネに重しをして1週間〜10日ほど浸けて置いて、内側から薄皮をはいで陰干しにして使った。 ちなみに昔は、シナノキの皮の繊維から糸をより布も織ったという。これを、しな布(シナフ)と呼び、とくに長野県では盛んに生産されその国名の信濃(しなの)の由来にもなったと伝えられる。繊維として使うのは最も木肌に近い内側の部分の繊維であった。 新潟県山北町でも現在も伝統工芸として受け継がれていると聞く。 また、シナノキの皮の繊維は水に強く昔から醤油や酒を漉す布や魚網の材として使われたと伝えられる。また、この皮でなったロープは耐久性に優れ昭和の初めの頃、石黒では子どもがスキーをワラグツに固定するための紐にシナノキの繊維でなった縄を使ったものだと聞いている。 写真2007.5.17下石黒 右2004.4.6落合 資料→シナノキの皮むきについて 資料→シナノキの買い付けとマナ板 シナノキの若葉 写真2012.5.8 板畑 上官山 シナノキの大木 写真2005.6.26上石黒 包葉とつぼみ 撮影日2011.5.23磯之辺(近隣村) |
解 説 シナノキ科 日本全土の山地に自生する落葉高木。 高さ20m、幹の直径は1mにも達する。樹皮は裂けやすい。 葉は互生し、長さ6〜9cm、幅5〜6cm。形は先のとがった左右対称ではないハート型で縁には鋸歯がある。〔上写真〕秋には黄色に紅葉する。 花期は6〜8月。淡黄色の小さな花がたれさがってつく。花には芳香がある。花序の柄にはオオバボダイジュと同様に靴べらのようなの苞葉〔シナノキの苞葉には長い柄があるが、オオバボダイジュの苞葉には柄がないか短い〕 果実は球形でおよそ径5o、細毛が密生する。 材質は柔らかく加工しやすいが耐久性に劣る。 名前の由来はアイヌ語の「結ぶ」の意味からという説の他に樹皮がシナシナすることによるとの説もある。 また、学名のTilia というラテン語には「繊維性の」という意味があり西洋でも昔はシナノキの樹皮が利用されたことを物語るものだという。 若葉 果実と包葉 写真2009.10.31下石黒 シナノキの皮はぎ 撮影日2006.6.13下石黒 シナノキの皮 2006.10.22居谷
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