ヨシ〔アシ〕
暮らしとの関わり
 カヤに比べるとヨシの群生は、石黒では比べものにならないほど少ない。しかし、集落によってはヨシもかなり多く見られるところもあるようだ。資料→牛馬の草刈り
 ヨシが少ないのは、カヤは日当たりのよい場所ならどこで育つが、ヨシは川縁などの湿ったところにしか育たないためであろう。
 石黒では、ヨシは主に茅葺き屋根材やヨシズの用材として使われた。屋根材としては、軒場の角を葺くときに耐久力もあり見た目もきれいなためにヨシがよく使われたという。→軒端の角写真 参照・屋根普請
 また、ヨシズは昭和40年代ごろまで、トマグチ(玄関)の入り口に立てて雪が吹き込むのを防ぐためにも多くの家で使われた。
 その他、ヨシの穂をつかって、板の間(座敷)用のボウキを作った。筆者が子どもの頃(1940代)は、このヨシの穂で作った自家製のほうきを使って掃いた。筆者の家にあった箒は柄が長く腰をかがめる必要はなかったが、穂先の腰が弱く子供には使いにくかった記憶がある。→資料 手作りホウキの色々
 このように有用なヨシも、休耕の畑などに入ると取り除くのが大変であった。短いヒゲ根のカヤとは異なりヨシは根茎を長く伸ばし節から芽を出して増えるためだ。
 よく似た種にツルヨシがあり、市街地周辺では隣接して生育している。見分けはツルヨシは地表を這うので一目瞭然であるが節に軟毛があることと節から根を出すことからも区別できる。
その他、葉舌の毛と葉の基部の形からも区別できる。右下写真参照
 柏崎海岸にもヨシの群生が見られるが10月初めにはすっかり枯れてしまう。これは潮風に因るものであろうと思われる。(下写真)
 

(写真上2005.6.13落合 右上2004.9.14下石黒 右下2005.5.8寄合)



       ヨシの群生(春)

 写真2005.5.3落合

       ヨシの群生(初夏)


 写真2009.5.19落合

               夏のヨシ

写真2011.6.21 上石黒

               穂の出る頃

写真2015.7.25春日 鯖石川付近

                秋のヨシ
 

写真2006.10.23寄合

オギ(左)・ススキ(中)との穂の形比較 
 
     
写真2010.10.10上石黒
柏崎海岸のヨシの群生 
 
写真2011.9.28 中央海岸 (水平線に佐渡が島) 
 
       晩秋ヨシの群生
写真  2007.11.13花坂水穴口


         早い時期に枯れる海岸のヨシ
写真2013.10.10 裏海岸
       
         市街地周辺の初冬のヨシ
写真2012.12.26 藤井

              早春のアシ

写真2009.3.16 畔屋

           晩秋のヨシ(右)とススキ
写真2014.11.30下石黒城山麓

※資料→ヨシ刈り

解 説
イネ科
 北海道から九州の日当たりのよい湿地に大群落をつくって生える多年草。 
 根茎は黄白色扁平で泥中に長く伸びて節からひげ根を出して繁殖する。
 草丈は、2〜3m。茎は堅く中空で毛はなく節がある(下写真)。茎は分枝しない。
 葉は、互生であるが風向きによって片側に寄ってついたものもある。(下写真)
 葉の長さは50pほど、幅4pほどで質は硬くざらつく。
 酷似した種にツルヨシがあるがツルヨシは淡紫を帯びることと葉舌が毛状であるという。
 花期は、8〜10月。茎の先に紫色を帯びた大型の円錐形の穂を出す。穂の色は次第に紫褐色に変わる。小穂は5個の花から成り細長く尖っている。
 胞穎2個は長さが異なるが共に護穎よりも短い。花をつける小軸には絹のような花より長い毛がある。
 若芽は食用になる。
 名前の由来は、アシとも呼ぶが「悪し」に通じるため、これを嫌って「ヨシ」と呼ぶようになったといわれる。 



        春の芽

写真2011.5.18下石黒

     出たばかりの穂

写真2007.8.27下石黒

 茎の縦横断面
写真2010.6.11 上石黒

   片側に寄った葉

写真2007.10.17板畑

  カヤ(下)との穂の比較
写真2011.9.15下石黒

 オギ(上)とヨシ(下)の穂

写真2007.11.17寄合

     種子散布期

写真2009.11.30寄合

     ヨシの小穂


写真2008.12.1 寄合

     初冬のアシ
写真2011.12.10板畑

 雪中折れないアシの稀な写真
写真2009.1.8板畑


※ ツルヨシとの葉舌と葉の基部比較