ヒメアオキ
暮らしとの関わり
 子どもの頃から、石黒ではブナ林や杉林の中によく見かけた。
 しかし、昔から石黒では「ヘンビツバキ」と呼びユキツバキより下等な扱いをした。「ヘンビ」がつくものにはその他ヘンビユリヘンビイチゴなどあるが何れも見下した呼び方である。ヒメアオキの場合、薪用の芝木にもならず役立たずの木と見られたものであろう。
 しかし、春の赤く色づいた果実は艶やかな葉と調和して美しい。ときには、見事に結実したヒメアオキに出会うことがある。→参考写真
 近年、石黒でも晩秋に赤くなった果実を時々見かけるが、小雪の年が続くためであろうか。
 今日(2013.12.3)、山小屋の上のブナ林でよく結実している高さ10p足らずの数本のヒメアオキに出会った。多雪地帯の石黒のヒメアオキは市街地周辺のものに比べて、おおむね小形ではあるが、かくも小さな木に結実したものは初めて出会った。
 念のため、基部に折れた、ないしは地中を埋もれた親木があるか、どうか調べたが見当たらず、根は明らかに独立した個体のものであった。
 アオキは石黒では見られないが、柏崎市街地では植栽が野生化したものが希に見られる。

(写真上2004.5.7下石黒 左上200。5.5.6. 左下2005.4.10)



             雄花(左)と雌花

写真2005.5.6下石黒

              幼実

写真2007.5.24落合

不揃いな形と大きさ果実の見られる個体(虫えい)

2004.12.7下石黒

          未熟な果実

写真2004.11.14下石黒


          まだら色状態の果実

写真2008.12.25下石黒
             赤く色づいた果実

写真2007.5.14下石黒

           花期のヒメアオキ

写真2009.4.10  泊山 記録的少雪 背景の木はフジ

                ヒメアオキの幹
写真2009.4.23下石黒

解 説
ミズキ科
 北海道の南部と日本海側の多雪地に生える雌雄異株の常緑低木。アオキの変種といわれる。
 高さ約70〜80p。幹は株立ちでやや横に這う形状で立ち上がる
(左上写真)
 葉は柄があってやや厚く艶があり互生し長さ3〜10p。縁には細かい刻みがある。葉裏の脈状に微毛があることがアオキとの区別点の一つ。
 雌花は紫色か淡緑色で径7o
(上の下写真)
 雄花は長さ7〜10pの花穂に群れてつく
〔上の上写真〕
 果実(核果)は翌春赤く熟し〔海岸地帯では晩秋には色づくものも多い〕楕円形で長さ1.5〜2p。しばしば虫こぶが見られる
(下写真及び説明参照)
 名前の由来は小ぶりのアオキと意味。




   ヒメアオキの虫こぶ

写真2004.11.14下石黒
  ヒメアオキの虫えい
 ヒメアオキの虫えいの中には、アオキミタマバエの幼虫がいる。この幼虫は、5〜6月に蛹から羽化し成虫となって外に出て羽ばたくが成虫としての寿命はたった1日。その日のうちに、小さな新しいヒメアオキ実に産卵して息絶える。そして、産み付けられた卵は幼虫となって翌年の初夏までそこで過ごすことになる。
 いはば、ヒメアオキの実はアオキミタマバエにとって一生の住みかと言ってよい。
 ところで、このアオキミタマバエの寄生率が高まるとヒメアオキの種子散布率が低下するといわれる。その原因は種子散布の媒介となるヒヨドリが水分の少ない虫こぶ(あるいは青い)のヒメアオキの果実を食べないことと、虫こぶとなった果実の種子形成率が著しく低下するためである。
地方によっては寄生率が5割を越えるといわれるが、石黒では筆者の観察では2割に達しないのではないかと思う。
一度、調べて見たいと思っている。
(参考文献−アオキミタマバエによる虫えい形成がヒメアオキの実生更新に及ぼす影響)

   雪の下のヒメアオキ

写真2005.1.14下石黒

 10pほどで結実している個体
写真2013.12.3下石黒

  下部から色づくものもある

写真2008.12.25下石黒

      完熟した果実
写真2009.12.1下石黒

        種子
写真2014.1.3畔屋