サワグルミ | |
暮らしとの関わり 石黒では「カワクルミ」と呼ばれ、川沿いや沢沿いなどによく見られる樹木の一つである。 昔から、桐材よりも安価なため、よく下駄材として使われた。 しかし、サワグルミの木を下駄屋が買い付けに来たという話は子どもの頃から聞いたことはない。下駄を作るには、よほど良質なサワグルミの木が使われたものであろう。 昔は、お盆前に家族全員の下駄を買ったものだが子どもの下駄は大抵サワグルミ材の下駄であった。〔日常の暮らし衣参照〕 また、サワグルミはオニグルミのように食用となる実もならず、薪としても不適であり評価は低い樹木であった。 上の写真は筆者の生家の小路にある石黒では珍しい大木である。直径約1m余、高さ30mはあろうと思われる。→参考画像(まさに、筆者の祖父、父、筆者、長男、孫の5代わたりを見守ってくれた大木である) 筆者の生家の周囲には他に数本あるが、とくに成長の早い木である。 昨日(2014.10.26)に石黒の生家の小路にあるサワグルミの種を採って回転の様子を観察した。1mほどの高さから落としても回転する様子は確認できる。これが、20〜30mから落ちる時にはもっとよく回転するのであろう。そして、風に乗って周囲に広く散布されるのであろう。→ビデオ「サワグルミの実の翼」また、沢や川沿いによく生える木なので流水によっても運ばれるのではなかろうか。 今日(2015.1.14)石黒の畑の農具小屋の除雪に出かけた。積雪は260pほど。道端のサワグルミの芽を見ると、まるで春の芽吹き前のような姿だ。子どもの頃から、真冬に家の近くにあった大木の芽を見るたびに「春の到来」を連想したものだ。 実は、サワグルミの芽は芽鱗は早く落ちて、毛筆状の裸芽で冬を越すことを知ったのは最近だ。しかし、今でも厳しい寒中にサワグルミの芽を見ると春の到来を想い起こしホッとする。その仕組みを知ったところでサワグルミの冬芽から受けるこの気持ちは少しも変わらない。 先日(2021.12.1)、古文書の参考書を見ていると の用例が見られた。「右の山内にてカワクルミにて箸木仕り候」と読むのであろう。この文から我が故郷石黒同様に「カワクルミ」の方言名があることを知った。また、下駄材の外に箸の用材としても使われたことが分かった。その他マッチ棒の用材として使われたとの情報もWEB上にる。 84才となる来年(2022年)の3月のころ、元気で石黒の生家のサワグルミに会いたいもである。 〔写真上・右上2005.7.12 右下2005.3.8下石黒〕 花期−雄花2 撮影2014.4.27下石黒 雄花と雌花 撮影2014.5.6下石黒 石黒川沿いのサワグルミ 撮影2011.5.12下石黒 大木 写真2011.6.9上石黒 雌花期 撮影2010.6.10下石黒 8月末に茶色に変わる種子 写真2014.8.29下石黒 写真2014.10.8下石黒 種子をつけたサワグルミ 撮影2008.10.21上石黒 嶺坂 散布された種子 写真 2018.8.31 下石黒 晩秋の果実のようす 撮影2011.11.12下石黒 背景-石黒城山 冬の様子 写真2015.1.14下石黒 |
解 説 クルミ科 北海道から九州までの山地の沢沿いなどの湿地に好んで生える落葉高木。雌雄同株。雌雄異花 樹皮は暗灰色でやや深い裂け目がはいる。高さは30mにも達する。 葉は互生し、小葉5〜10対あり奇数羽状複葉〔下写真〕で無柄で先は尖り縁には細かな鋸歯がある。 花期は4〜6月。雄花は尾状で新枝の葉脈につき、長さ10〜20p。雌花も尾状であるが新枝の頂端につき後に両翼のある果実が連なって紐状にさがる(下写真)。長さ20〜30p。 冬芽は柄があり、淡い黄灰褐色で頂芽が発達する。芽鱗は早く落ちて裸芽で冬を越す。冬芽は毛筆形となる(下写真)。 種子からの芽ばえの様子には特徴があり興味深い。(下写真) 材はマッチの軸木、器具、その他下駄材としても使われたため「ヤマギリ」と呼ばれる。 名前の由来は沢沿いを好むクルミの意味。 特徴ある発芽から幼苗 撮影2011.9.24下石黒 芽吹き始まる 撮影2007.4.14下石黒 花期-雄花1 撮影2007.4.21下石黒 花期-雄3 撮影2014.4.27下石黒 花期-雄花3 写真2014.5.10下石黒 幹と葉と花序(雌) 撮影2010.6.10下石黒 雄花 撮影2013.5.16下石黒 雌花から種子へ 写真2016.5.8下石黒 両翼のあるサワグルミの種子 撮影2008.11.21下石黒 種子 写真2014.9.21下石黒 冬芽−大木 写真2015.3.17下石黒 冬芽-幼木 写真2015.1.14下石黒 |