トリカブト〔オクトリカブト−猛毒
暮らしとの関わり
 柏崎刈羽地方に自生する種はオクトリカブトとで特に毒性が強いといわれている。昔、アイヌが熊狩りの矢に塗ったと伝えられる。また、狂言に登場する「ぶす」はトリカブトの塊根を乾燥させた毒のことだという。
 石黒は隣接の地区と比較して、トリカブトが特に多く自生しているように思われる。村中の道ばたででも普通に見られ方言では「牛殺し」と呼ばれた。→参考資料
 根に最も多く毒があるといわれるが葉でさえも致死量は僅か1グラムというから、まさに「牛殺し」と呼ぶに相応しい猛毒植物であろう。中毒症状はまもなく現れ、嘔吐から呼吸不全、臓器不全で死に至ることもある。
 子どもの頃から、ドクウツギとともに親に言い聞かされたので、この花を手折るようなことはしなかった。
 また、石黒ではニリンソウ〔自生地も少ない〕を山菜として食べる習慣はなかったため中毒の話は筆者は聞いたことはない。
 石黒では、現在でも集落内の道脇などに群生しているところもある。(参考写真) 上の写真は上石黒地内の国道脇で撮ったものである。

 ※トリカブトの春の若芽が山菜となるニリンソウに似ているために、誤食して中毒による致死事件となることもある。とくに両者は混生していることが多いので注意を要する。端的に言うならつぼみのついたものを採取すれば安全である。→下の比較写真参照
 本日〔2012.4.7〕北海道で、ニリンソウと間違えてトリカブトを食べた3人の男性〔いずれも40代〕のうち一人が死亡、一人は意識不明の重体、もう一人は命に別状はないとのニュースが報道されている。報道によれば、「ニリンソウを採った、おひたしにしたらうまい」と茹でて食べ、その後嘔吐などの症状が出たという。

(写真上・右下2005.9.28上石黒  右上2005.4.28下石黒 
右中2005.6.21下石黒 )



        赤みを帯びた春の若芽 1

写真2010.5.5下石黒

                   幼苗

写真2008.4.23下石黒

    間違いやすいニリンソウとの比較(つぼみに注目)
トリカブト ニリンソウ
写真2010.5.5下石黒

              互生する葉

写真2011.7.4下石黒

       光沢ある葉〔写真葉裏面〕

写真2013.6.2下石黒

               花序


    子房と反曲する雄しべ

写真2007.10.1下石黒

         トリカブトの花のつき方

写真2008.9.22下石黒

       種子散布後の袋果

写真2009.12.8板畑 嶽


             塊状の根

写真2013.6.2下石黒


 
解 説
キンポウゲ科
 日本全土に自生する高さ50〜100pの猛毒の多年草(分離型地中植物)。
 根は倒卵形の塊状で地中に真っ直ぐに伸びる〔左下写真〕。直径1〜3p。同形の新根が両脇についている。
 茎は若草は直立し後に上部は湾曲する。高さ60〜150pほどで円柱形で滑らかであるが上部には屈毛がある。
 葉は互生して柄をもち3〜5裂し若葉は深い切れ込みがほぼ基部まで達する〔上写真〕。裂片にも大形の鋸歯があり先端は尖る。葉の質は厚く光沢がある〔左下写真〕。春の若葉は裂片が細く褐紫色を帯びる。
 花期は10月〜11月。枝の先や葉のつけ根に花序をつける。  花の色は深紫色〜淡紫色で変化に富む。花の長さは3〜5pで外面には屈毛があり花柄の長さは3〜7o。上部のガク片は大形の帽子状で立ち長さ3pほど。花弁2個は直立して上部のガク片の中に立ち変形して蜜腺状となり頭部は反り返り下部は柄となっている。雄しべは3〜5個あり上部は藍色で外側の雄しべは反曲し花糸の下半分は白く薄い状となる。子房は3〜5個で緑色。
 果実は袋果で、〔下写真〕種子にはひだがある。植物としては最も強い毒をもち天然毒ではフグの毒に次ぐものという。
 トリカブト類は我が国では30種あるといわれるが柏崎刈羽に見られるものは「オクトリカブト」と呼ばれるものが多い。この種は世界で2番目に毒性が強いといわれている。
 名前の由来は花の形が舞楽〔ぶがく〕の時に伶人が用いる鳥兜〔冠〕に似ていることによる。



       若芽 2
写真2010.5.5下石黒

      若葉の形
写真2009.4.24下石黒

    茎と葉のつき方

写真2013.6.2下石黒

       葉の形
写真2011.7.4下石黒

      花序と花冠

 花柄〔伏し毛は見られない〕

  雄しべにあるまばらな毛
写真2007.10.1下石黒

       若い果実

写真2005.10.18下石黒

    種子撒布中の果実

写真2005.10.28板畑