カタクリ
暮らしとの関わり
 石黒では「カタコ」と呼んだ。方言名のカタコは、古名「カタカゴ」に語源をもつものであろうか。
 雪深い石黒に春を告げる代表的な野草である。春風に花が揺らぐ姿には、いかにも花が喜びにふるえているような風情がある。スプリング・エフェメラルのひとつである。
 ごく稀ではあるが白花に出会う。〔画像〕
 石黒では、カタクリの芽が残雪を突き破って出てくる頃に(下写真)引き抜いてお浸しにして食べた。甘みがあり絶妙な味わいであったが、控えめに食べないと下痢(腹痛なし)をした。
 戦中、戦後は、此の球根を掘って供出した。言うまでもなくカタクリ粉の原料としてである。
 カタクリの球根は、実生から7、8年して花をつけるころになって充実するが、生長するにつれて球根の位置が深くなるため、掘るのは意外と難しかった。→子どもの暮らし
 古老の話によると、昔、カンノ畑(焼き畑)を荒らし2、3年すると、カタクリの見事な群生が見られたものだという。

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資料-ふるさと石黒の春の妖精たち

(写真2005.4.24板畑 写真右上2005.4.28 右中2005.5.31下石黒 右下 2005.6.20)


      残雪を突き抜けて伸びるカタクリ


撮影2010.5.18 落合

         残雪野中に咲くカタクリ



写真2013.4.23石黒城山

          雨の日のカタクリ

撮影2006.5.11下石黒

         斑入りの葉のカタクリ

写真2006.4.29下石黒

        種子にあるアリの好む突起物

写真2010.6.11下石黒

解 説
ユリ科
 北海道から九州までの各地に自生する多年草
 根茎は白色多肉の筒状で5〜6p。その先から一本の茎を伸ばす。
 茎〔花茎〕は1本出て15pほどで根元に一対の葉がある。
 葉は長い柄があり、2枚左右に開き、楕円形で先はとがっている。
 葉の長さは、10〜20pで葉はなめらかである。葉質は柔らかく表面は淡緑色で暗紫色の斑点があるものが多い〔左写真〕
 花期は4〜5月。茎の先を下を向けて1個の花をつける。花は明るい紫色で径は4〜5p。花披片6個は先はとがり強く反り返る。内面の基の方に濃紫色のW字の紋がある(下写真)。雄しべは6個で長さがやや不同でヤクは紫色で長さ6〜8o。柱頭は短く3裂する〔左写真〕
 鱗茎からは良質の澱粉〔真正の片栗粉粉〕がとれる
 実生から5、6年は葉1枚で生長する。
 果実は、三角に角ばつている〔下写真〕。深緑の頃になると鱗茎は充実して地上部は枯れて跡形もなくなる。
 種子は径2oほどで、アリの好む突起物があり(左下写真)アリによって運ばれ繁殖するという。
 名前の由来は、古名「カタカゴ」が「カタコユリ」となりさらに転じて「カタクリ」となったといわれる。



   ブナの根元の一輪

写真2013.4.23石黒城山

   果実の成長と種子






  花後のカタクリの地下部

写真2009.4.28下石黒


      花のつくり

写真2006.5.6大野