アブラチャン
暮らしとの関わり
 石黒では「アブラエボ」と呼んだ。 
 アブラチャンは、マンサクに次いで、春の到来を告げる木である。残雪の中で、葉が芽吹く前に黄色い花を開く。
 だが、アブラチャンの花が、マンサクほどに目を引かないのはなぜであろうか。それはおそらく、マンサク比べて花の形が人の目にアピールする特徴に欠けるためであろう。
 だが、マンサクの果実は、ほとんど人の目を引かないが、アブラチャンの丸く大きな艶やかな果実は人の目をとらえる。
 とはいえ、彼らにとっては人の目など、どうでもよいのだが・・・・・・。
 筆者が子どもの頃、囲炉裏で焚くボイ(柴木)に他と違った燃え方をする木があったことを憶えている。おそらく、それが油分を多く含んだアブラチャンの木ではなかったかと今にして思う。
 また、オオバクロモジタムシバなどと同様、囲炉裏の回りに好い香りが漂ったことも覚えている。
 村の古老の話によると、この木は粘りがあるため石黒では昔、カンジキ用材として使う人もあったと聞く。
 今日(2014.3.20)の新潟日報に上越市の団体が、アブラチャンの種子から食用油を採取してフキノトウの天ぷらをして食べたとの記事が掲載されていた。昔、果実を絞って油をとって灯油に使ったという記録は目にするが、石黒では未だ聞いたことはない。

 (写真上・右上2005.5.3板畑 右下2005.10.1上石黒)

写真2011.4.28上石黒


                花期-@-雌株

写真2015.4.2 北条西方寺境内(上墓地への石段)

          花期-A-雄花
写真2015.5.7下石黒

                雄花のつくり

写真2006.5.6落合

                春の木の様子

写真2011.5.18大野

               果実期

写真2013.8.14北条西方寺境内

              互生する葉
 写真2007.9.4板畑

           お盆の頃の果実

写真2014.8.10下石黒 背景−城山

            果実のよくついた枝
写真2013.9.7北条西方寺境内

        開裂して種子を見せる果実

写真2019.9.19 下石黒 横道

          早くも見られる冬芽

写真2015.9.23下石黒
             冬芽



写真2011.11.1 上石黒小岩トンネル入り口


解 説
クスノキ科
 北海道を除く各地の山地に自生する落葉低木雌雄異株
 高さ4m前後で樹皮は灰色褐色(下写真)
 幹は株立状。樹皮は灰褐色で皮目は円形または楕円形。
 葉は互生し全縁で長さ4〜7p(左下写真)。葉柄は長くて紅い(下写真)。両面ともに滑らか。
 3〜4月、葉が開く前に多数の黄色い小花をつける。(上写真は雄花)つぼみの時には総苞鱗片に包まれている(下写真)。花序は小枝のもとから2個ずつ付き前年からすでにつぼみが見られる(左下写真)。ガクは深く6裂し長さ約2mm。雄しべは外輪の雄しべと内輪の雄しべがある(左下写真)
 果実は直径1,5pほどの球形で後に不規則に開裂して1個の種子をあらわす。
 昔はこの種子から油をとったと伝えられる。
 名前の由来は、油と瀝青〔レキセイ−チャン(塗料の一つ)〕を会わせたもの。



   10月の半ばの冬芽
写真2016.10.15下石黒

       幹


写真2005.5.3板畑

   残雪の上に花開く
写真2006.5.6落合

    つぼみのころ
2015.5.7下石黒

       雄花
写真2006.5.6落合

   葉の展開前

写真2015.5.7下石黒

    赤く長い葉柄
写真2009.7.28上石黒

      幼果
写真2014.5.20北条

   成熟前の果実
写真2015.7.4下石黒

      果実
写真2005.7.28下石黒

    果実の大きさ

写真2014.8.10下石黒

   開裂したし果実
 写真2019.9.19 下石黒 横道

    果実の様子
採取 2014.1.7北条西方寺境内