フジ〔ノダフジ〕
暮らしとの関わり
 ここ数年、春になると、いたるところに見事なフジの花が見受けられるようになった。昔もフジはあったが、杉の木やブナの木などに巻き付くと、木肌に食い込んで生長を妨げるため、村人は、常に林を見回り、細いうちに鎌や鉈で蔓を断ち切った。筆者も子どもの頃に腰にナタ鎌を差した父に連れられて林まわりをした記憶がある。
 また、フジ蔓は、古代から建築材の運搬に使われたと言われるが、昭和の前半までは、石黒でも「ダイモチ」のソリの組み立てや材木の結わえ綱として用いられた。その他、馬のフグ(四季の農作業 稲上げ参照)やソイカゴを作る材料などにも使われた。
 
しかし、今ではフジの蔓を利用することもなくなったばかりか、過疎化が進むにつれて、林の手入れがされず、フジ蔓は伸び放題、暴れ放題で森林の害樹となっている。
 実に、近年の絢爛たるフジの開花の陰には、このような深刻な営林上の問題がひそんでいるのである。
→参考画像
 2010.7.12の新潟日報歌壇に「
杉の木の梢を巻きて山藤が一樹まるごと紫に染め」という十日町市の五十嵐幸男さんの歌が掲載されている。この歌の背後にある作者の心情は「感心して賞める」意味よりも「嘆き悲しむ」意味あいが強いものに読み取れる(参考写真)

            (写真上2007.5.27下石黒) 
 初冬の晴天の日に林に入るとオモチャのピストルの音に似たパンパンという音に驚くことがある。フジの実のサヤがはじける音である。しかし、翌春の花期のころになっても落下しない果実もあるのでフジの種子散布期は初冬から6月ごろまでということができよう。(下写真)。
 また、筆者は、太平洋戦争直後の、子どもの頃に炒ったフジの種子を食べ過ぎて猛烈なめまいに襲われたことを今も忘れることができない。立っていることができずにつかまっていた電柱の根元に仰向けに横になったところ電柱の先端が大きく円を描いて回るように見えたことを憶えている。
 晩秋から冬の果実(豆果)を観察すると小さな虫穴のあるものに時々出会う。もしかすると、虫は早くから侵入して、その果実だけは春まで弾けないような作用を及ぼして堅固な棲みかとしているのではないか、などと想像するのも楽しいものだ。

→子どもの暮らし
→初冬のフジの果実

写真上2005.5.19 上右中2005.8.9 下石黒


          フジによる倒木

写真2004.12.11板畑

             残雪の上のフジの実


写真2011.4.21上石黒

                  つぼみ期
写真2011.4.29上石黒

     花期の頃までついている果実もある

撮影2012.5.5畔屋

      フジの種子散布の時期は長いらしい

撮影2012.5.5畔屋
解 説
マメ科
別名 ノダフジ
 本州・四国・九州の山野に自生する落葉蔓性植物。
 幹(蔓)は、他の木に巻き付く。長さ10メートル以上にもなり、木を枯らしたり引き倒したりする(左下写真)。  
 葉は、互生奇数羽状複葉で小葉は4〜6対で長さ4〜6p。質は薄く両面に多少毛がある。
 花期は4〜5月半ば頃。紫色の長さ30〜50pの房状の花をつける(下写真)。(ヤマフジは短い)小花の長さは12〜20oほどで柄は花より長い(下写真)
 果実は、豆果でサヤは堅く、細かい毛で覆われていて、長さ10〜20pで皮は固い(上写真)
 種子は、2〜4個と数は少なく茶色で碁石の形をしている(左下写真)
 名前の由来は、野田藤の意味で、野田は昔、フジの名所であった大阪の地名。フジは吹き散るの意味といわれている。
参照画像←クリック 



    房状の花

写真2007.5.22落合

     小花より長い花柄

写真2009.5.9寄合

    太いフジづる

写真2009.10.31下石黒

   杉やブナに巻き付くフジ

写真2008.6.8下石黒

  必死のまきつかれた木

写真2016..3.26畔屋

ブナに巻きついた巨大なフジ

 写真2012.5.8 板畑 上官山

  年輪から見た成長の様子

写真2012.5.8 板畑 上官山

   見事な縄状のフジの蔓

写真2013.4.23石黒城山

      冬芽と葉痕

写真2015.1.21田塚

      ふくらむ芽

写真2015.3.28畔屋