草花と遊んだ頃のおもいで
                       大橋洋子

 四季を通じて野山を駆け巡り、身近な草木や草花と慣れ親しんだ頃を懐かしく思い出します。
 春には学校帰りにスッカシスッカンボを取って食べ、家へ帰れば近所の裏庭のタウエグミをみんなでほおばったものでした。
 夏になればキイチゴやクワイチゴを採りに野山へ出かけました。クワイチゴなどは食べるだけ食べると、大きなフキの葉に入れて口をしぼり、道中で食べながら帰ったものです。
 秋にはアキグミヤマボウシ、クリ拾い、ブラブラとぶら下がっているアケビに出会うと胸が高鳴り、あのアケビの色合いは子供心にも不思議な魅力を感じる色合いでした。口の開いたアケビはその場でほおばり、甘い汁を吸った後、口をとがらせて一気に種を吹き飛ばしながら手の届かないアケビを下から恨めしく眺めたものでした。サルノトッケツ(ガマズミ)は、種の回りをガムの代わりにクチャクチャ噛んだ懐かしい思い出です。ガムと言えば杉の木のヤニもガムの代用でしたが歯にくっつくので噛むのにちょっとコツが要りました。ミヤマツは甘酸っぱく味も濃くて美味しかったですが近間ではあまり見かけず足を延ばさないと容易には口に入りまぜんでした。
 冬には雪の上にケンポナシの実が落ちるのでよく拾って食べましたが独特な甘みと風味でしたが、それでもお菓子などなかった時代ですから少々クセがあっても果実の甘みに惹かされて拾って食べていたように思います。
 他にも四季の折々にクイバナ(ヤマツツジ)の花を食べたり細枝に重ねて刺したり、葉っぱについたモチ(虫えい)も見つければ取って食べました。ナラの木の葉のミズタマも口に入れて噛むとシュワッと広がる触感が今のウイスキーボンボンのような感じでした。
 また、身近な草や葉っぱとも親しんだものでした。ツバキの葉やピーピー草(スズメノテッポウ)で草笛を作って鳴らしたり、ススキや笹の葉で草舟を作って流したり浮かべたり、ボウズグサ(スギナ)の芯を抜いて、そっと挿し込んだ節を当てっこしたり、オンバコの茎を折り曲げて交差して引っ張り合って力比べをしたりしました。
 そのほか、ヤマタケノコの皮を五本指に被せたり、シダの葉先が重なるように交互に折り畳んでみたり他にもまだまだありました。 枝の先を折って、トウトウベロベロと言えば村の人ならどんな遊びか誰でも分かるでしょう。
 子供の遊び道具や環境も時代と共に変わってしまいましたが、野山を駆け巡り自然と親しんだ子供の頃を想い出すと、木の実を食べ、手に届かぬアケビを恨めしく見上げた頃のことが時代と共にいよいよ懐かしく甦ります。
                                                                                                                (福島県在住)