ミツバアケビ
暮らしとの関わり
 石黒では「アカエブ」と呼んだ。
 ミツバアケビのツル〔走出枝〕は、ソイカゴや手提げかごなどの用材として使われた。ミツバアケビは、アケビやゴヨウアケビに比べ蔓細工材に適していると言われている。その上、同じミツバアケビでも多雪地帯のものが粘りがあって使いやすいとのことだ。
 筆者も中学生時代(1953頃)、学校で工作の時間にアケビ蔓で手提げかごを作ったことがあった。工程や完成品の記憶は定かではないが、秋に蔓を採取するときに地上を伸びた蔓が長いことに驚いた記憶がある。採った蔓をしばらく池に浸しておいて樹皮をしごくときれいな木肌があらわれたことを憶えている。
 また、当時は果実も、子どもたちにとって秋の代表的な味覚として好まれた。10月の半ば山に入ると、たくさんのアケビの実がぶら下がっていた。皮の色は、白っぽい物もあったが、多くはスカイブルーに近い、言うに言われぬ美しい色合いであった。
 果肉の甘みは、自然に開いた直後のものが最高であった。子どもたちは、皮を開いて果肉を口に入れ甘い汁を吸って種を一気にほき〔吹くようにして吐く〕出した。
 未だ色付かない実をとってきて、籾ぬかに入れて熟させて食すこともした。
 若芽は、現在では山菜として珍重されているが当時は食べる人はいなかった。
  希に、春に昨秋の果実がそのままふら下がっている珍しい光景に出会う(左写真)。
 石黒にはアケビやゴヨウアケビは自生していないようだ。
 ちなみに、ミツバアケビは落葉樹ではあるが、真冬にも暗紫色の葉を残している個体をよく目にする。(右下写真)

資料→アケビの利用

(写真上2005.10.6板畑 右上2005.5.7下石黒 右下写真2005.4.30寄合



         古い枝の葉のつきかた

写真2006.5.10落合

         花期のミツバアケビ

撮影2005.5.15下石黒

            花のつきかた

撮影2011.5.8居谷

                   花から果実へ

撮影2006.6.8寄合

            未熟な果実

撮影2005.9.29落合

      口を開いたミツバアケビの実

写真2007.10.12下石黒

                秋の味覚

写真2012.10.18 採取者 早川勇さん 

解 説
アケビ科
 北海道から九州に分布。雌雄同株の蔓性植物。
 茎の根本から走出枝は細く長く地上を遠くまで横走る。
 葉は互生し長い柄があり3複葉で小葉は卵形あるいは広卵形である。下面はうす緑色(下写真)。長さ4〜6p。先端は鈍形であらい鋸歯がある。古い枝の葉は一カ所より群がりでる〔写真左下〕
 花は、暗紫色で花弁のように見受けられるがガクである。花は、雄花と雌花が一緒に咲くが雌花〔上の下写真〕は大きく1〜3個、雄花はたくさん群がりつく〔下写真〕
 花弁はなくガク片は3個で雄花のガク片の長さは2o、雌花のガク片は8oほどで円形から広い卵形。
 雄花には雄しべが6個、雌花には柱状の心皮が4〜6個ある〔上写真〕
 果実は、楕円形で熟すと、スカイブルーの美しい色に変わった  皮が縦に裂けて黒色の種子を含んだ果肉を現す〔左下写真〕。 果肉は、甘く食用となる。
 名前の由来は、熟すと口が開くことから「開け実」、あるいは「あくび」あるいは、アケウベ〔開くムベ〕などを語源とする諸説がある。



    ミツバアケビ葉裏

撮影2010.10.17下石黒

    粗い鈍形の鋸歯
撮影2013.7.16田塚

    大きい葉もある

撮影2011.6.29下石黒  
     
     花のつきかた

撮影2005.5.15下石黒

  落下せず越冬した果実

撮影2009.4.18下石黒

冬に葉をつけた個体もみかける

写真2014.1.15下石黒


  ※参考画像 アケビ


撮影日2004.5.4曾地峠
※ゴヨウアケビはミツバアケビとアケビの天然雑種であるといわれている。