山の自然の恵み
                          田辺雄司
 子どもの頃、長い冬が終わる3月の末になると、近くの山でモミジの小枝を折ったり二股の枝を裂いたりすると、そこから樹液が出てきました。そこに口を当てて吸うと甘くておいしいものでした。
 雪が消えると道ばたにスッカンポースッカシなどが出てくるので、学校の帰りなどによく採って食べたものでした。
 田植えの頃になると、昔から堅い山肌に張り付くように生える葉の小さな植物のズズミという実を採って食べると甘酸っぱい味がしたものでした。
 そして、田植えが終わる頃にトゲのある木イチゴがたくさん実をつけましたが、これは甘くてとても美味しいものでした。
夏の暑さ厳しくなる頃、地面を這うナワシロイチゴがたくさんなりました。これも美味しいイチゴでした。
ナワシロイチゴ
 そのうちに、ホオズキが赤くなり、センナリホオズキ、スッパスメが熟します。
どちらもとても美味しい果物でした。現在では滅多にないが、たまに見つけて食べてみると子どもの頃が懐かしく思い出されます。
 秋になれば、ヤマグリアケビアキグミヤマナシ(粒は赤く小豆くらい)など、どれも天然の恵みで美味しい物でした。
 中でも、クリ拾いは一番の楽しみで、木に上って枝を振って落としたり、竹の棒にカギをつけてもいだりと柿もぎと共に楽しいものでした。
 ヤマグリはたくさんとれたときには、山砂をとってきてその砂の中にクリを入れて保存して置きました。
 カキも秋の早いうちから雪の降る頃の渋柿までと期間の長い果物でした。秋の甘柿が終わると遠い山から渋柿をもいで袋の中に入れて背負ってきました。渋柿はダンゴやアンボウの中に入れると甘くて美味しいものでした。
 また、夜、寝る前にいろりのホドの周りの熱い灰の中に渋柿を埋めておくと、夜中に渋が吹き出し朝になると甘くなっていました。それを朝食べるのが楽しみでした。