牛馬の餌となる草 田辺雄司 昭和30年(1955)以前には、農耕用の牛馬が多くの家で飼われていました。 当時は、牛馬の餌は春夏秋には野の草が主な餌でした。毎日農作業を終えてから作場の近くで草を刈って束ねて背負ってきて牛馬に与えました。この作業を「馬の草刈り」「牛の草刈り」と呼びました。秋になると刈る草がだんだん少なくなり苦労したものでした。
家に帰り着く頃にはすっかり暗くなることもありました。家に着き背負って馬屋に近づくと馬は足で床を掻くような動作をして催促するのでした。 馬が最も好んで食べる草は、クズ、カヤ、ヨシ、ハギなどで、これらの草は一葉残らず上唇でかき集めるようにして頭を上げることもなく一心に食べたものでした。 反対に、ヨモギやドクダミ、オロ(アカソ)などが混じっていると一切口にせずによけて足で踏みつけてしまいます。スギナなどももくもく食べるのですがこの草は余計に食べさせると下痢を起こすといわれ余り食べさせないようにしていました。 しかし、春あまり大きく成長しないものを刈り取って干して他の干し草と混ぜて冬食べさせました。 9月になり稲刈りの頃になるとハサ縄代用のフジヅル(クズの蔓)を採取しました。この時、フジヅルをたぐり寄せて葉を取って丁寧に編んで乾燥して冬の馬の餌の干し草に混ぜて食べさせました。(蔓は8の字にたぐねて水に浸しておいてハサづくりに使いました) このクズの芽や花は、私たちも天ぷらにして食べる事もありましたが、やや酸味が感じられたように記憶しています。それほど美味いとも思いませんでしたが不味いものでも無かったように思います。 (居谷在住) |