トノサマバッタ
暮らしとの関わり
 トノサマバッタは、子どもの頃から最も親しみをもった昆虫の一つであった。
 夏季に何度か刈り払われる農道の短い草の一面に生えたところによく見られた。
 子どもの頃見た記憶では、体長10p近いものもいたように想うが、大きくて8pほどであったのであろう。飛び立つとハタハタと羽音がしたことを覚えている。
 子ども達は、大物に目をつけて狙ったが捕まえることは容易ではなかった。草と土の色にとけ込んでしまい姿を見分けることが難しい。そっと近寄ると、急に足下から飛び立って初めて身を隠していた場所が分かる。
 飛行距離も半端ではない。楽々と10m以上飛んだ。着地点を見定めて近づくと、またもや不意に飛び立ってしまう。今度こそと、次の着地点を目指してそっと近寄る。
 灼熱の太陽、コオニユリの花、クズの花の香りを含んだ夏の草いきれ。
 アブラゼミミンミンゼミの鳴き声、キリギリスの鳴き声・・・・・・・。
 麦わら帽子をかぶり、捕虫網を持って、トノサマバッタを追った七十余年前の遠い夏の日を今も鮮やかに思い出すことが出来る。

※酷似するクルマバッタとの違いを実物で比べてみたことはない。本ページに掲載した画像はすべてトノサマバッタであると思うがお気づきの点があったら御指導を頂きたい。

〔写真2006.8.6上石黒 上個体−雌〕


             交接

写真2014.9.29 佐水

       草と土の色にとけ込んでしまう姿
写真2014.9.29 佐水

         交接の様子

写真2007.10.12下石黒

              褐色型

 写真2005.8.24下石黒  
       


解 説
バッタ科
 日本全国の山地や平地の荒れ地などに多く見られる。
 日本のバッタ類では最も大きく代表種である。
 体長は45〜65oほどであるが大型のものでは80oに達するものもいる。 雌のほうが大きい。
 からだは緑と褐色の斑があるものが一般的てきであるが、全体が褐色のものの他に中間型もいる。〔写真右下〕
 年2回発生し、成虫は夏から秋にかけて現れ、イネ科の植物の葉を食べる。
 産卵は腹部を土中に差し込み行われる。夏に産み付ける卵は秋に孵化するが、秋に産み付けられた卵は越冬して翌年の春に孵化する。
 食草は単子葉植物の多くの植物。
 また群の密度が高まるとはねが長くなり飛ぶことに適した形態となる。自然の中でこのような変化を起こし飛蝗〔ひこう〕となり大移動して作物に被害を与えることもあるが、日本での例は少ないが、明治12(1879)年から数年にわたり北海道でトノサマバッタの大発生の記録がある。
 名前の由来は大きく堂々としている姿による。別名ダイミョウバッタ。



      雄(?)

写真2005.8.24下石黒 

        交接


写真2014.9.29 佐水

 ゼンマイの葉に泊まった個体
写真2005.9.17 下石黒