ゼンマイ
暮らしとの関わり
 ゼンマイは昔から山菜としてどこの家でも採った。
 しかし、昔はゼンマイの出る頃が最も田仕事の忙しい頃なので年寄りや女衆が仕事の合間に採ることが多かった。採ってきたゼンマイの綿を取り除き、ゆでてムシロの上に広げて天日で乾燥する。1日に何回か揉まないとものにならない。今も昔もゼンマイは手のかかる山菜である。
 だが、冠婚葬祭には必ずゼンマイの煮染めが出されるほど貴重な食品でもあった。どこの家でもトタン製の菓子缶の中に入れて保存しておいた。→日常の暮らし・食事
 また、女の子はゼンマイの綿を乾かして保存しておいて冬になると、靴下をほぐした糸を巻いて手まりを作った。〔下写真〕
 昔は、この綿を利用して布を織ったと聞く。ゼンマイの綿は保温性はあるが腰が弱いので真綿を混ぜて糸にしたものだという。
 また、山菜採りでは、ゼンマイの胞子葉〔右下写真〕は「キンタマゼンメェ」と呼び採らないで必ず残した。方言の「キンタマ」は陰嚢の意味であり、語源はその形が似ていることによるものであろう。

(写真上・右下2005.7.15下石黒 右上2005.5.9上石黒)


        山菜採りのころのゼンマイ

写真2005.4.28 居谷

  毛の色は白〜濃褐色まである(先方はクサソテツ)

写真2009.5.17板畑

                 群生
写真2006.5.13居谷

              葉の開き始め
撮影日2011.6.6大野

写真2009.4.30寄合 記録的な小雪の年

               葉全開
撮影日2011.6.16下石黒

             葉の形

撮影日2010.9.11下石黒

               晩秋の頃

撮影日2004.11.14上石黒
                冬の姿
写真2013.1.3畔屋
解 説
ゼンマイ科
 北海道から九州に生える大形多年草の夏緑性のシダ。根茎は大形で塊状。
 葉は根茎から束生して高さ50〜100pになり冬は枯れる。山地の斜面に多く見られ、幼葉はゼンマイ状に巻いて白〜濃褐色の綿毛に覆われるが成長にともない脱落する(左・下写真)
 葉柄は成長後のものは硬く、光沢があり基部近くの両側にがある。
 葉は三角状広卵形で2回羽状複葉(左下写真)、羽片の長さは20〜30p下部の右辺ほど長い。小羽片皮針形〜広皮針形で長さ5〜10p。幅1〜2.5p。縁には細かい鋸歯がある(下写真)。二種の葉があり春早く胞子葉を出し次いで栄養葉を生ずる。〔雪国ではほぼ同時期に出る〕胞子葉の小羽片は極めて狭く縮んで綿状となり胞子嚢を密生する〔上写真〕
 夏になり稀に栄養葉の上部羽片が胞子葉に変化することがある。
 早春に未だ開かない栄養葉を摘んで、ゆでて乾燥したものは山菜の王者として珍重される。胞子葉は胞子を散布後春のうちに枯死する。
 名前の由来は丸まった若芽を銭に見立てたもの。ちなみに金属のゼンマイの語源は植物のゼンマイにあるという。



      幼苗

撮影日2009.5.4 寄合

   ゼンマイ胞子葉の芽
写真2006.5.13下石黒
写真2011.6.1寄合

      茎断面

撮影日2009.7.4 寄合

     葉の様子
写真2013.7.15下石黒

  小葉の細かい鋸歯
写真2013.7.16下石黒

 胞子嚢 (※um=千分の1mm)

撮影2012.4.28 

 根の様子〔土をつけたまま〕
撮影2013.6.23下石黒

  集めたゼンマイの綿
撮影日2008.1.28下石黒

     コメント紹介
 子供の頃(昭和20年代後半)、ゼンマイ(山菜)の綿を捨てずに乾かした物で「てんまり」を作りました。 乾燥した茶色の綿を堅く丸めて、その上に糸や、着古しのセーターや、穴の空いた靴下などの良いところを解いてつなぎ合わせた毛糸などをきつく巻きつけて、マリつきをして遊んだものです。弾み具合もまぁまぁで、こんなものだと思っていました
 30年代にはゴムマリが市販され、綺麗な色柄模様で驚くほど高くはずむゴムまりが流行りだすと羨ましく、ほしいと思いましたが容易には買ってもらえない時代でありました。(大橋洋子 2009.1.5受信)