クズ | |
暮らしとの関わり 石黒では、「ケェゴ」「ケェゴズル」「フジッツル」などと呼んだ。 山のヤブ〔藪〕で最も勢力を誇る山野草はクズであろう。夏の頃になると、木の頂上まで蔓を伸ばし、木全体を覆い尽くし時には木を枯らすこともある。〔上写真〕(※クズは緑化植物や家畜の飼料に役立つためアメリカに持ち込まれたが、その旺盛な繁殖力のため今では「緑のヘビ」と呼ばれて有害植物扱いのところもあるという)また、柏崎市近辺の海岸では砂浜に侵入繁茂して海浜植物の成長を妨げている様子が見られる。 9月頃に赤紫の房状の花を立ててつける。花は甘い香りを放ち、この時期に山道を歩くと至る所でこの芳香に出会う。 昔は、どこの家でも食用にウサギを飼っていて、その餌の草を取るのは子どもの役目であった。夕方、遅くまで遊びほうけて急いで草をとるには、このクズの葉が一番簡単であった。つるをたぐり寄せて葉をとってくれば事足りたからだ。〔上写真〕また、牛馬の餌にもされた。 終戦のころ、葛粉を作るためにクズの肥大した根(下写真)を採取したこともあった。下の写真の大きな根は2011年に政栄さんと居谷の外谷(参照-石黒の田畑地名場所一覧)へ出かけた折、途中の崩れ落ちた土の中にあったものである。その巨大さに驚いたが、大きなものでは電柱ほどの太さのものも稀にあるとのことだ。 また、昭和の10年代までは、クズの蔓がハサ縄代わりに使われた。採ってきて水に一週間ほど水に浸けてハサの縦縄や最上段に棹を結わえるために使った。あまりに需要が多かったために、村で採取の解禁日を決めてホラ貝を吹いて知らせる集落もあったという。 〔→四季の農作業〕 (資料→ハサづくりの思い出) 昔は、葉も蔓採取時に取って一つかみずつ藁で縛り縄で編み乾燥して家畜の餌にしたり、日陰干しにしてトイレットペーパー代わりに使ったものだという。 参考資料→馬の餌草刈りのこと また、蔓に虫えい(虫こぶ)を見かける。(左下写真)形は円柱形や球形であり、クズクキツトフシオジロアシナガゾウムシによるものである。 (写真上2008.9.10寄合 右上2005.8.31下石黒 右下2005.9.10寄合) 芽が出たころの様子 蔓が伸び始めるころの様子 葉の形と表と裏 撮影2007.6.12下石黒 花期のクズ 撮影2010.8.18下石黒 花穂の成長 写真2016.8.2 藤井 葉を立てて猛暑をしのぐクズ 撮影2010.8.27上石黒 過去の記録にない猛暑の夏 果実散布の頃 撮影2008.11.28寄合 デンプンを含んだ大きな根 撮影2011.5.8居谷 撮影 政栄 海岸のクズ 撮影2012.10.8笠島 砂浜に侵入するクズ 写真 2013.7.8 荒浜海岸 |
解 説 マメ科 日本全土のいたるところに見られるといってよい大形多年草。 根は長大で多量のでん粉を蓄え主根の長さは1.5m、直径は約20pにも達する(左下写真)。 茎は蔓状で15メートル以上になることもある〔左上写真〕。蔓には褐色の粗い毛があり、基部分は木質になる 葉は、互生し長柄の先に3枚の小葉(長さ15pくらい)つける。小葉は全縁または浅く3裂〔頂小葉〕、2裂〔側小葉〕する(下写真〕。小葉の上面は緑色で粗い伏毛があり、下面は白色を帯び白色の毛を密生する。托葉は披針形〔下写真〕。夜間は葉を閉じる。また、夏の強い日射しも葉を立てて裏面の白さで反射させて水分の蒸発を抑える(左下写真)。 花期は8〜9月。赤紫色の長さ15〜20pの房状の花を直立してつける。 花は蝶形花で、翼弁2、竜骨弁2、旗弁1、雄しべ10本は下部で合着し、雌しべ1。(下写真) 旗弁は広楕円形で凹頭でほぼ直角に立つ。竜骨弁は翼弁より大形で長い。ガクは長さ8〜9o、短い伏せ毛を密生し最下のガク裂片はガク筒の約2倍の長さに達する〔下写真〕。 果実〔豆果〕は長さ6〜8o、幅8〜10oで褐色の剛毛が密生する(右上写真) 名前の由来は、奈良県の国栖(くず)で葛粉を作って売ったことに依るといわれる 托葉 写真2005.8.31板畑 立ち上がってつく花序 写真2016.8.7藤元町 開花まで 写真2010.8.20下石黒 クズの花のつくり 写真2005.8.31下石黒 ガク〔萼〕 写真2005.8.31下石黒 クズの種子 撮影2008.12.1下石黒 太い木質基部 撮影2011.5.8居谷 桐の木にによじ登るクズ 写真 2004.12.19下石黒 根から蔓基部へ 撮影2011.5.8居谷 蔓の虫えい 撮影2009.1.8下石黒 |