オイランソウ

 石黒では昔から現在まで、花壇の花としては最もポピュラーなものであろう。
 花が手毬花のように球状に密接して咲くため花序は豪華で美しい。香りは甘く、子どもの頃には、よく鼻を近づけて嗅いだが、何か白粉の匂いに似ていたように思った。「オイランソウ」という名前との関連があるかどうかは分からない。(金田一著「四季の花」によれば関連あるようだ。)
 筆者の家の花壇では子どもの頃から紅色の種が栽培されていて、夏になるとキアゲハカラスアゲハ類が数羽で吸密をしていたことを記憶している。灼熱の太陽の下、翅の鱗粉が、こぼれ落ちるようなキアゲハを間近に観察した70年余も昔のことが昨日のことのように思いだされる。
 また、8月13日のお盆の墓参りの供え花には欠かすことのできない花であった。下ろし立ての下駄をはいて、降るようなヒグラシ鳴き声の中、家族そろって村はずれの墓地まで歩いたこともことまで懐かしく思いだされる。

(※年中行事−お盆  ※
下駄屋)

 写真 2010.8.8 下石黒


        花壇に植えられたオイランソウ

写真 2010.8.20 下石黒



解 説
ハナシノブ科
 日本では明治の頃から欧米から観賞用に導入栽培されている。別名「クサキョウチクトウ」 であるが、キョウチクトウ科ではない。大正期から「オイランソウ」と呼ばれるようになったが、現在では「宿根フロックス」と呼ばれることが多い。
 高さ40〜120p、茎は直立してふつう分岐しない。
 花期は6〜8月。花の直径は2pほどの合弁花が数十個、かたまってつく。花序の径は10〜20pほどになり美しい。花の色は紅、白、藤色などがあり、また、筒の部分が白色になるものもある。
耐寒性があるが高温多湿には弱い。
名前の由来は、花序の形が花魁(おいらん)の髪型に似ていること、また花の香が白粉に似ていることによる。


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 写真 2018.11.3 下石黒