ヒシ | |||
暮らしとの関わり ヒシは、昭和20年(1945)頃は、石黒では少ない植物の一つであったが大野板畑方面の池にはしばしば見られた。 ヒシの果実には堅く鋭いトゲがあるため参考画像→花〜種子水田に進入することを嫌い昔から駆除に努めたことも増えない原因の一つであったであろう。 筆者は母〔生まれは大野〕から、子どもの頃〔大正中期〕ヒシの実をとってきてゆでて食べたものだと聞いたが自分の子ども時代には食べた経験はなかった。 食糧難で食べられるものは何でも食べたと言ってもよい太平洋戦争のころ子どもであった筆者に食べた記憶がないということは集落付近の池には生えていなかったのであろう。 しかし、現在ではどこの集落にもヒシに覆われた池が見られる。〔下写真〕 このように池をヒシが覆うと、景観をそこなうばかりか光がさえぎられることによって酸素不足をきたし水生動物の棲息条件を悪化することになる。 一方、適度の繁殖は夏期におけるアオコの発生を抑えたり、チョウトンボなどの水生昆虫の隠れ場なる好影響も考えられる。 要は、いずれにしても池の全面を覆うことにならないような管理が必要だということであろう。 また、昔は、ヒシの実も食べ物としての価値もあったこともヒシの異常発生を防いだ一つの要因であったかもしれない。 筆者も、20年も前になるが、子どもの頃に食べた経験がなかったので試しに採取してきて茹でて食べてみたが意外に美味しく、とくにビールのつまみには適していた。
余計なことだが、ヒシの実とカタクリ芽は美味しいが、ほどほどに食べておくほうが無難である。 今朝(2012.8.16)はヒメシダの追加撮影に再び畔屋を訪れたが一番大きな池の水がきれいにはらってあった。底に下りてみるとおびただしいヒシが枯れ死しつつあった。 真夏に水を払い乾かすのはヒシの異常繁殖をふせぐための処置なのであるかもしれない。聞きとりをしてみたい。→写真 最近(2015〜)、石黒や市内の水鳥について関心をもって観察しているが、ヒシクイという冬鳥がいることを知った。未だ出会ってはいないが名前のとおりヒシの実を好んで食べるといわれている。ヒシクイが飛来する頃(10〜11月)には、ヒシは株を離れて水底に沈んでいるであろうが、あの鋭いトゲを嘴で処理して食べることができるのは「ヒシ喰い」の名前をもらっているこの鳥の天性の技であろう。近くでは、嘴でヒシの実を割る音が聞こえることもあるそうだ。 (写真2005.9.2板畑) 幼 苗 写真2005.6.8大野 ヒシの群生した池 写真2006.9.21板畑 ヒシの下面の様子 写真2006.9.21大野 ヒシの全体の姿−※泥の中に伸びた根は退化がみられ、つなぎ止め程度の役目しか果たしていないように見える。上はめ込み画像は水根 写真2012.8.16畔屋 幼苗脇の水面に浮かんでいる空の果実(発芽後のものか) 写真2011.7.31落合 |
解 説 ヒシ科 北海道から九州までの各地の池や沼などに自生する一年生水草。 しばしば繁茂して池や沼を覆う。 茎は泥の中にあった前年の種子から芽を出して長いひも状の茎を伸ばし葉は互生し菱形で水面に浮く〔下写真〕。 葉の横の直径は6pほど、菱形状三角形で上部に鋸歯がある。 表面は光沢があり裏面には隆起した脈があり毛がはえ葉柄の途中が上の写真のようにふくらみ浮き袋の役目をする〔左下写真〕。 花期は7〜10月。葉の付け根から出た花柄に白色の花をつける〔上写真〕。ガク片4個、花弁4個、雄しべ4個、花柱1個、花の中心に縁に歯のある黄色い花盤(下写真)があり、蜜を出す。子房はやや下位。 果実は、鋭く角ばったっていて堅く、鉤状のトゲがあり水鳥などの羽に付着し種子の散布する。参考画像→花〜種子 種子は栄養価も高く昔から食用とした。この種子を特に好むヒシクイという鳥(雁ほどの大きさの渡り鳥)がいる。 名前はの由来は、緊(ヒシ)−鋭いトゲの意味から、挫ぐ(ヒシグ)−実が押しつぶされたような形の意味から、あるいは、多くの葉が広がった姿−ヒシゲた状態から、葉の形が菱形によるなど諸説がある。 ヒシの草姿 写真2007.7.22落合 ガク片 写真2007.8.21板畑 花弁 写真2007.8.21板畑 花盤と雄しべ雌しべ 写真2007.8.21板畑 2個だけ残る宿存ガク(後のトゲ) 写真2007.8.21板畑 完熟に近い果実 写真2009.9.17大野 完熟した果実 写真2009.10.21畔屋 ヒシクイ 写真 2018.2.3刈羽 長谷川 |