アズマイチゲ | |
暮らしとの関わり 雪解けを待ちかねたように一斉に花開くアズマイチゲは、石黒に育った者にとって春の原風景を彩る花の一つであろう。 石黒では、キクザキイチリンソウと区別せずに「オトコカタコ」と呼んだ。 キクザキイチリンソウに混じって咲いているのをよく見かける。花は似ているが葉の形は異なり、全体の姿はキクザキイチリンソウにくらべ軟弱な感じである。とくに朝など花が半開きでしなだれている様はいかにも弱々しい感じがする。 花冠の色もほとんど白一色だが、この内気な美しさの中に限りなく人の心を惹きつけるものがある。 下石黒の地名カザマキの山道の土手に、筆者が子供のころから見続けてきた群生場所がある。そこは、筆者の家の作場があったホウノキヤマに行く道中で、今でも、石黒の春の花といえば、その場所のアズマイチゲの花々が目に浮かぶほどである。→群生写真 今年(2012)の春も、75年もの歳月の流れをものともせずに見慣れた場所に清楚な花々を見せてくれた。 一方、わが故郷は止めようもない過疎化の波に押し流されて衰退の一途をたどり、今では村の戸数、人口共に当時の十分の一以下になってしまった。元作場「ホウノキヤマ」への農道も荒れ放題で、今ではチマキザサが侵入し(上写真-撮影2019.5.1)その所在も分からなくなりつつある。 令和元年の初日である今日(2019.5.1)神奈川から帰省した長男と孫を伴い3年ぶりに訪れてその変わりように驚いた。 資料→荒れ果てた作場「ホウノキ山」 資料-ふるさと石黒の春の妖精たち (写真2005.5.12下石黒) 根状葉と葉状苞 写真2008.4.23下石黒 アズマイチゲのつぼみ 写真2006.5.5下石黒 草全体の姿 写真2010.4.30寄合 |
解 説 キンポウゲ科 北海道から九州の林の周りや土手などに多く見られる多年草。 根茎は横に伸びて先端に鱗片がある(左下写真・下写真)。 根生葉は花がすんでから伸び、長柄があり長さ10〜15p。2回3出複葉〔参考図→クリック〕で小葉は3出状に分裂する。 一本の茎に一つの花をつける。(名前の「一華−イチゲ」はこのことによる) 茎の高さは15〜20p。花は直径3〜4pで花弁(8〜13枚)に見えるものはガクである。ガクの裏側は、ほのかに紅色を帯びている。このことから「ウラベニイチゲ」の呼び名もあるという。(写真右上) 雄しべは多数で黄色。雌しべも多数。細い卵形の子房には細毛がある。 地上部は初夏には姿を消す。 名前の由来は「東イチゲ(一華)」の意味で関東地方に多く見られる事による づボミの頃 写真2006.5.5下石黒 雄しべと雌しべ 写真2008.4.23下石黒 アズマイチゲのソウ果 写真2005.5.21下石黒 根茎の先端の鱗片 写真2010.4.30寄合 カタクリ、キクザキイチゲとの混生 写真2011.5.10下石黒
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