イノシシ | ||
暮らしとの関わり 初めて、イノシシの被害が石黒で見られたのは2008年の秋であった。(石黒だより2008.11.14欄 -下写真) 場所は板畑の嶽のソバ畑周辺であったが、イノシシの姿を目撃した者はなかった。(生来は昼行性である彼らが姿を見せなかったということは人間に対する強い警戒心の現れであろう)。 その折、筆者もその被害を撮影するため嶽を訪れた。ソバ畑の被害は、ソバが所々なぎ倒されていた程度で想像していたほどのものではなかった。深刻な被害は近くの水田で見られた。場所はソバ畑の東側、カラマツ林の下方の刈り取り前の水田であったが数頭で泥浴びをしたらしく、見るも無残な状態であった(下写真)。いわゆる「のた場」にされ数頭のイノシシが水田の中でのたうち(転げ)回ったものであろう。ただ、ほかの田には侵入した形跡が見られなかったのでほっとしたことを憶えている。 その後、イノシシ防止の電気柵の普及により今では被害は食い止められてはいるがイノシシの生息数は年々増加していることは明らかだ。 ちなみに、ニホンカモシカの生息が確認されたのは、イノシシよりも7~8年前であった(筆者は1998年に目撃)。しかし、足の短いイノシシが豪雪地の石黒地区に棲息することは誰にとっても想定外のことであったであろう。筆者の知る限り、江戸期の石黒の古文書にも害獣として「鹿、猿、兎」の名前は見えるが「猪」は見当たらない。 今にして想うとイノシシの被害が田畑に初めて発生した数年前(2005年ごろ)から、山の林の縁あたりにそれらしい痕跡が見られた。そのころ筆者は動植物の撮影のために石黒地区の山をくまなく歩いていたのだが、所々でヤマノイモやトコロ堀りの跡を想わせるこのような穴を多く目撃した。しかし、その正体を突き止めることが出来ずにいた。最初の頃に特に多く目撃した場所は上石黒の地名-オオヌゲから入山(スギ植林付近)にかけてであった。すでにその頃からイノシシは石黒地区に生息し始めていたに違いない。 その後は、言うまでもなく年々増え続け現在では集落内の田や畑にも被害が及びつつある。 上の写真は去年(2019.7.10)落合集落の地名「そでやま」で草刈り作業中に撮影されたものである。 目撃者の話によれば、2人で農道に腰を下ろして休憩していたところ前方から一頭のイノシシがこちらにやって来るのが見えた。どうやらイノシシは、先方に人間がいることに気づいた上で近づいて来るように見えた。20m程に近寄ったので一人が大声で叱りつけると少し後戻りをしたが再び方向を転じ近づいて来た。8mほどに近づいたので危険を感じ、2人で草刈り機を振り回して威嚇すると逃げ去ったという。(情報提供-大橋伊勢治 田辺和栄 ) また、近頃、畔(くろ)などに大きな穴を掘る被害が増えている。穴は深さが70cmにも及び大人が横たわってすっぽり入るほどの穴もある(下写真)。彼らのねらいは餌となるクズ、ヤマノイモ、ススキなどの根であるようだ。その他、住居から離れた畑ではジャガイモを喰い荒したり、ネギなども掘り起こしてそのままにしておく(好物のミミズなどを漁ったものか?)など被害が増えている。 ちなみに、今回情報を頂いた田辺さんの話によると先頃(2020.6)、落合~居谷間の道路沿いでニホンジカ(市内では6年程前から目撃)の親子を間近で目撃したとのこと。 こうした大型動物の出現により故郷石黒の生態系の変化に驚くとともに一方、昆虫や両生類などの小型動物の生態系、とくに絶滅危惧種が増えている事にももっと関心を持つべきと自省している。 写真、情報 大橋伊勢治 田辺和栄 草刈り作業中、農道に現れたイノシシ 撮影 2019.7.19 大橋伊勢治 積雪の上を群れで移動する様子 (写真-2018.12.23 高柳町地内 撮影-村田) イノシシに荒され放置された刈り取り前の水田 写真 2008.11.14 板畑 嶽 イノシシに荒された車道脇斜面₋ススキの根を食べた痕 写真2020.5.23編集会 水上~清水谷間 情報提供-保坂さん |
解 説 イノシシ科 日本には北海道を除いてニホンイノシシとリュウキュウイノシシ、八重山諸島イノシシの3亜種が分布するという。(また、亜種ではなく、別種として分類すべきとの説もある)。 大きさは成体で体重50~150kgほどて、雌の体の大きさは雄に比べて20~40%ほど小さい。 性質は非常に神経質で警戒心が強い。 また、強い突進力をもち、走る速さは時速45㎞に達するといわれている。巣穴などに不用意に近づいた人を襲うこともある。雄の牙は鋭く非常に危険であるといわれる。 ダニ等の寄生虫を落としたり、体温調節のために泥浴するために水田に入り転げまわり稲作に被害を与えることがある。 食性は、草性で植物の茎葉や根(山芋・クズの根) その他、キノコなども食べるが、昆虫やミミズ、蛇などもたまに食べるといわれている。 基本的には昼行性だが人間の活動時間の影響から二次的に習性として夜行性も示す。 野生では壽命は約10年と言われている。繁殖は春に行い一回に4~5頭ほどの子を出産する。春の出産に失敗した場合秋に出産する事もあるというが多雪の石黒ではないであろうと思われる。 また、基本的には水を嫌うといわれてるが、いざとなると30㎞位は泳ぎ切ることが出来るというから驚く。 天敵は、動物では存在せず人間以外でイノシシを捕食するものは日本にはいない。 雪上に見られるイノシシの通路 写真-2018.12.23 村田 農道を歩くイノシシ 撮影 大橋伊勢治 |