オニドコロ
暮らしとの関わり
 石黒では、昭和30年代までは、トコロの根茎を掘って食べた。強い苦味があるが若干甘味もあり、酒の肴や茶請けに好む人も少なくなかった。筆者の父親もその一人であったのでので、子供のころに食べた経験があるが、苦味が強く、好きにはなれなかった。
 ヤマノイモの根と異なり太い根茎が浅くかたまっているので掘るのは容易であった。家によってはカマスに何俵も取ったという。石黒では昔から恐慌植物として用いられたと聞く。
 近頃(2009)は、健康食品としてトコロの根茎を好んで食べる人が多いと聞く。しかし、根茎には喉や胃腸に炎症を起こす有毒成分があるとの情報もあるので注意を要する。
 トコロは、古くから知られた植物で万葉集や芭蕉の句にその名「トコロズラ」が見られるという。
 開花時期には花の蜜を吸うアリをよく見かけるが花粉の媒介の役をしているのか、密だけ吸っているのかは手元の文献では明らかにできない。(下・右写真)
 チョウ類のダイミョウセセリの食草。

(写真上2006.10.20下石黒  右上2009.2.13 政栄

資料→トコロ掘り

     オニトコロの花の蜜を吸うアリ

             撮影2005.7.15大野

            花期のオニドコロ

                     撮影2007.8.1 下石黒

         秋のオニドコロの黄葉

    撮影 2008.11.12大野

           オニドコロの根茎

 
      
撮影2009.2.13(小雪)に掘り出し撮影  撮影者 政栄

        
初冬にトコロ掘りをする村人

撮影2009.12.8 大野入山



解 説
ヤマノイモ科
山野に生えるツル性の多年草。地上部は冬は枯れる。雌雄異株
 茎は肥大して横に長く伸び真っ直ぐになるもの曲がるものがあり沢山のヒゲ根を出す。これは根茎でありヤマノイモの芋(多肉根)とは異なるもの〔左下写真〕。
 葉は長い柄〔3〜7p〕をもち広いハート型で互生し長さ5〜12p、幅5〜10p。(ヤマノイモは対生)ムカゴはできない。
 7〜8月に、淡緑色の花をつける。雄花をつけた花穂は直立し花には短柄がある〔下写真〕。雌花をつけた花穂は垂れ下がって花をつける。花片は6個あり雄花は雄しべ6個、雌花には3柱頭をもつ〔下写真〕。
 果実〔さく果〕には3枚のがあり垂れ下がった穂に上向きにつく〔下写真−果実2〕。種子は一方には皮膜の翼をもつ〔下写真〕。
 地方によっては根茎を正月の飾りに長寿を祝って供える習慣もある。
 名前の由来は、根に塊ができることから「凝(とこり)」と呼び、それがなまってトコロになったとされるなど諸説がある。「オニ」は他のトコロに比べて葉が大きいことによる。




    オニドコロの雄花


   オニドコロの雌花


    オニドコロ果実1

撮影2004.9.10下石黒
※上の写真のように、成長した果実と花のついた小さな果実が混じっているものを見かける。この時点で成長しないものは落下してしまうのであろか
    
    オニドコロ果実2

写真2004.12.10下石黒

         種子

写真2004.12.10下石黒

  私が子供の頃は学校の帰り道にトコロの果実を取って鼻の上に一列に並べて、だれが沢山つけられてるか競争して遊んだものでした。
 未だ青い果実は表面に細かい毛があるため後でかゆくなるので秋も深まったころにやった野山での遊びの一つでした。 
 田辺雄二 居谷 2012