トチノキ(植栽)
暮らしとの関わり
 石黒では自生のトチノキに出会ったことはない。植栽されたものは見られるがきわめて少ない。(※葉の形がよく似たコシアブラはふつうに見られる)
 現在、寄合集落の屋敷内に植えられたもので6〜7mのものが見られる。筆者の観察によれば未だ花はつかないようだ。
 柏崎の市街地及び周辺でもほとんど見かけない。しかし、筆者の知る限りでは、南鯖石地区に大木が1本ある。高さは20mはあったように記憶する。(約30年前)
 筆者は勤務先がこの地区であった時に、たまたま、その木の下を通ったところクリの実に似た種子が沢山落ちていたので、上を見上げたところクリではなくトチノキであることを知って驚いた。
 その折に、その実を5個ほど拾って持ち帰り、石黒の生家跡の庭の土中に埋めておいたところ全部が発芽して1mほどに成長した。その中の1本を次の勤務地の小学校の庭に移植した。
 当時の小学校の国語の教科書に斎藤隆介著の『モチモチの木』が掲載されており、以前から何度か教材として扱った経験がある。「モチモチの木」とはトチノキであることの解説はあったが、子どもたちに実物に触れさせたいために苗木を移植したのであった。
 ところで、昨日(2017.2.16)は最高気温13℃という、2月の中旬にしては珍しい暖かさであったので、西山町海岸にユキバタツバキの撮影に出かけた折に20年前に植えたトチノキに出会うために小学校に立ち寄った。
 トチノキは根元の幹の直径が30pほどに成長していた。
 相手が樹木であれ人であれ、こうして久しぶりに出会った時の喜びは少しも変わりがない。しばらくその場で幹に触りながら対話した。枝先の大きな冬芽が樹脂で油を塗ったように光って生気を発していた。
 ちなみに、トチノキの「栃」のついた県名に栃木県がありトチノキが県木となっているが、新潟県にも栃尾市(現在長岡市)がある。筆者の新任地は栃尾市の山間地であったが、トチノキの記憶はない。確認のために所蔵の「栃尾の植物」を開いてみると「山地にふつうに見られる落葉高木」という書き出しで、数か所に大木もあることも記されている。植物に特に興味のなかった当時の筆者の目にはとまらなかったのであろう。
  その他、県内には「栃窪」「栃堀」などの地名があり、ふるさと高柳町にも「栃ケ原」という地区名があって、筆者はここにも在勤したことがあるがやはりトチノキの記憶はない。
 現在も確認していないが、「高柳の自然」の樹木の一覧にトチノキが見当たらないことからおそらく自生はしていないか、していてもごく希なのではなかろうか。
今後できれば確認してみたいと思っている。
 また、トチノキの実は昔から食用植物として重視されていたことのことは知らているが、石黒や高柳の古文書には筆者の読んだ範囲では出会ったことはない。

 
写真2016.6.25 下寄合 


               若葉の頃

写真2012.6.7下石黒

   1993年に実生2年の苗を植えたトチノキ
写真 2017.2.16 西山町
解 説
ムクロジ科
 東日本を中心に分布し、特に東北地方に顕著に見られる落葉広葉樹。水気を好み、適度に湿気のある肥沃な土壌で育つ。
 幹の高さは25m、直径1mを超えるものもある。
 葉は非常に大きく全体の長さが50pにもなる。形は長い葉柄の先に倒卵形の小葉5〜7枚がつき、枝先に集まってつく。基部の葉は小さく中央のものは大きく長さ30pにもなる。
(上写真)縁には鈍い重鋸歯が見られる。(下写真)
 また、葉の裏に軟毛のあるものはケトチノキで新潟県ではこちらが多いようだ。
 花期は5〜6月に、葉の間から穂状の花をつける。花冠は円錐花序で垂直に立ち上がり単性花または同性花。色は白〜薄い桃色。ガクは鐘形で不規則に5裂し花弁は4個。雄しべは花弁よりも突出して長い。
 果実はツバキの実に似る。熟すと厚い果皮が3裂して濃褐色の球状の種子を落とす。「栃の実」と呼びれ昔から食用にされてきた。
 冬芽は褐色の粘液で包まれるのが特徴。
(下写真)
 材は周囲は白色で芯に近い部分は黄色。乾燥が進むと亀裂ができる短所がある。巨木になるので木鉢の材料として使われた。
 名前の由来は不明。
 「マロニエ」は近縁種セイヨウトチノキ。



      樹皮の様子

写真2006.6.25寄合

  冬芽(樹脂で光る)と葉痕

写真2017.2.16二田

      葉の下面

写真2007.6.2寄合

   葉の縁の鈍い重鋸歯
写真2006.6.2下石黒