カシワ
暮らしとの関わり
 石黒には自生しない。
 筆者がカシワの木を初めて見たのは高校生時代に信越線の列車の窓から鯨波あたりで見たのが初めてであった。
 真冬であるのもかかわらず大きな葉を日本海からの強風にも耐えてしっかりと枝につけている姿が逞しくも異様にも見えた。
 石黒に多いブナミズナラコナラを身近に見て育った自分は秋の落葉が過酷な冬を乗り切るための樹木の戦略と思っていたので何と強靭な木であろうか、と思った。同時にこれは石黒には自生できない木であるとも思った。なぜなら降雪季にこれだけ大きな葉をつけていたのでは雪を枝上に留めてその重圧で全ての枝が折れてしまうことは確実であるからだ。
 その点、海岸は降雪が少ないうえに何よりも風があるために雪害を受けない。のみならずあるいは、新芽の部分を寒風から守る役目を果たしているのかもしれない。
 また、一年中葉があることから、昔から縁起の良い木として、慶事・神事に使われ、庭園にも植えられることもあるという。 そういえば、高校の校章がカシワの葉をあしらったものであったことを思い出す。
 その他、柏崎市の地名の由来もカシワに起因してると思われる。また、市章は、カシワと海を図案化したものであり、カシワは昔から柏崎にとって象徴的な樹木であったのであろう。(※但し市の木は市全域に自生するマツ)。
 上の写真は、裏浜の公園に植えられた木である。是非、近いうちに鯨波、笠島あたりの強風に耐え抜いた自生のカシワを撮影してきたい。
 昨日(2014.2.1)小春日和であったので柏崎方面に動植物の撮影に出かけた。冬のカシワの葉の様子も撮影リストの一つであったが、さすが海に面した斜面の個体は大半の葉を落としてしまっていたが、防風林の中の個体は未だほとんどの葉をつけていいた。
 なぜこのように落葉が遅いのかについては、冬の季節風の塩分から新芽を保護するためなのではないかという説がある。しかし、最も過酷な環境である海に面した場所の個体の葉がほとんど落ちていることから、この説は説得力をもたないように思われる。
 名前の由来は食物を盛る「炊葉」の意味といわれ、石黒でホウノキの葉を連想するが小形で、柏餅の菓子に使える程度と想われるが、よく観察すると大きな葉も見られる。小皿代わりに使うには適した大きさかもしれない。(右下写真)
 今日(2015.12.15)鯨波海岸でカシワのドングリを観察した。堅果はすでに傷んだものが多かったが穀斗は真新しい感じのものもあった。穀斗の内側の壁部分から鱗片が立ち上がる様をルーペで陽に透かして見るとまるでヒマワリの花のように見えた。→写真

〔写真2007.10.2 落合〕


 風当りの弱い海辺では古葉がついたまま芽吹きが始まる


写真2014.4.28裏海岸

   若葉が開花しても古い葉が残っているものもある
写真2014.5.19裏海岸

          大形の葉と表裏

写真2011.6.4裏浜

            雄花穂

写真2012.5.7裏浜

                 夏のカシワ

写真2016.8.12裏海岸

              秋のカシワ
写真2012.10.25椎谷海岸

      2月になっても葉の落ちないカシワ

写真2014.2.1赤坂山
      校庭に植栽されたカシワ(右はユズリハ)
写真 2018.1.12 西山町二田

         散布された堅果

写真 2015.2.17 裏浜
写真 2015.12.15鯨波

        殻斗から離れて落下した果実

写真2016.9.30裏海岸

         枝中部の冬芽と葉痕

写真2015.2.17裏浜

 風当りの強い所では3月には既に葉は見られない

写真2015.3.6鯨波海岸


解 説
ブナ科
 北海道から九州まで広く分布する落葉高木。北陸、東北地方などでは海岸沿いに生育して強い風にも耐える。雌雄同株
 大きなものでは高さ10〜17m、径60cmにもになる。樹皮は灰黒褐色で縦に厚く深い裂け目がある。新枝には淡褐色の軟毛が密生する。
 葉は大形で波状鋸歯があり長さ15〜30cmほどで倒卵形で先は鈍頭。初めは両面に星状毛があるが後には上面はほとんど平滑となるが下面には星状毛が残る。
 葉は秋には枯れるが落下せずに越年し春まで残る。
 花期は5〜6月の若葉が伸びるころに開く。雄花の尾状花穂は長さ10〜15cmほどで新枝の基部から多数垂れ下がり黄褐色の小さな花をつける。
 雄花のガク片は7〜8裂し、雄しべは8個ほどある。雌花の花穂は短く新枝の葉の付け根から出て少数の花をつける。雌花は8裂した総苞につつまれ花柱は3個ある。
 堅果はほぼ球状で長さ1.5cmほど。穀斗(かくと)はお椀状で多数の鱗片があり、鱗片は細長く褐色で反り返る。
 葉と樹皮は染材に葉は餅菓子を包むために使われた。
 名前の由来は、カシワは「炊葉」の意味で昔は食物を盛る葉はすべてカシワと呼んだが今はこの木だけの名前となった(牧野植物図鑑)。



      冬芽と葉痕
写真2015.1.24裏海岸

    まだまだ堅いつぼみ

写真2015.3.26裏海岸

       ほころぶ

写真2014.4.28裏海岸

  葉が開き始める

写真2015.4.18裏海岸

        若葉
写真2012.5.7裏浜

       大きい葉

写真2014.5.19

        雄花
写真2012.5.7裏浜

         果実へ
写真2016.7.5藤元町

       果実(堅果)
写真20113.8.19裏海岸


写真2014.8.27柏崎海岸

       成熟果実

写真2016.9.30裏海岸

   穀斗表裏の様子


写真2015012015鯨波

  漸く落葉する海辺の個体
写真2014.2.1鯨波海岸

 虫えい ナラハグキコブフシ写真2011.6.4裏浜