トクサ
 生活のと関わり
 筆者がトクサに出会ったのは、このサイトを作り始めた頃(2003頃)であった。市街地の知り合い家の庭で出会い、とても珍しく思ったので数本分けてもらい、石黒の生家跡の庭に植えた。年々、地下茎を伸ばし広がり、少し見苦しくなった。
 そんな折に、近くに住んでおられたSさんが来宅された折りに「ツメトギグサ(爪研ぎ草)ですね」と珍しそうにトクサを眺めておられた。株分けを所望されたのでスコップで掘り起こして差し上げた。Sさんの話から、昔は、石黒でもトクサが庭に植栽されていたことが分かった。
 Sさんは、その数年前に火災で家を失い、関東の子どもさんのもとに移住されたが、故郷は離れがたく、屋敷跡に別宅を建て冬季以外は暮らしておられたのであった。

 先日(2018.10.2)、大野集落に稲刈りの撮影に行く途中にSさんの別宅に立ち寄ると池の周りにトクサが元気よく生えていた。また、その時に一緒に差し上げたフッキソウもよく育ちトクサと調和して佳い景観となっていた。
 私は、思いがけなく、身内に出会ったような懐かしさを感じてしばらく近くで眺めながら、今は亡きSさんの事を想った。集落で最後の茅葺き屋根普請で2人ならんでカヤ〆の作業をした60余年前のことまで思いだした。
 どこか遠くから時期遅れのツクツクホウシの鳴き声が微かに聞こえた。(2018.10.2)

写真2018.10.2 下石黒


           節の處のつくり
写真2018.10.2 下石黒

解 説
トクサ科
 本州北部から北海道にかけて山間の湿地に自生する。また、観賞用に庭に植えられることも多い。
 地下茎が横に伸び、所々で地上茎を直立させる。同科まスギナのように枝分かれすることはない。
 茎の高さは60〜100pほど。直径は5〜7mmほど。
 茎は中空で節がある。茎の表面はざらつく。表皮にはプラントオパールと呼ばれるケイ酸が蓄積し硬化し砥石のように物を研ぐことが出来る。
 茎は引っ張ると節の所から抜ける。節の處のハカマ状のギザギザのものが葉にあたる。
 茎の先端にツクシの頭部状の胞子葉群をつける。長さ6〜10mmほど。
 名前の由来は「砥草」、つまり、物を研ぐことが出来ることによる。


    葉に当たるところ
写真2018.10.2 下石黒

    フッキソウと共に
写真2018.10.2 下石黒