ミツガシワ

暮らしとの関わり
  ミツガシワは石黒には自生していない。柏崎市内でも自生地は数カ所しかない。四国と沖縄をのぞく日本全土に分布するにしては柏崎には少ない植物である。
 ミツガシワは水位の変動の少ない池によく見られるが、上写真の市内折居の池は、底に黒姫山の水源があり常に冷水をたたえ、雨水などによる増水時も自然に流出して一定の水位が保たれる理想的な環境であるといえよう。
 また、同じ場所にアシマコモなども見られるがミツガシワは彼らに先立って、春早く根出葉に続き花茎をのばして開花し7月には果実が成熟するので生育を阻害されることはないのであろう。
 むしろ、ミツガシワとヨシの共生は普通にみられるものであり湿原植物の植生として理想的な姿であるのかも知れない。
 試しに根茎を取り出して観察したがヨシに引けを取らない立派なもので、太いところは径1pに近くありなかなか逞しい。いかにも氷河時代から生き延びてきた植物にふさわしいものだ。
 観察後の根茎は丁寧に水底に戻してきたが、これらの希少な柏崎市の自生地も大切に見守っていきたいものだ。
 今年初めて自生地を訪れたが、開花の最盛期を逃してしまった。来春は発芽の頃から観察をしてみたい。今年は、これから成熟した種子も見てみたいと楽しみにしている。
 ちなみに、昔は、このミツガシワの自生地に隣接する黒姫山への道は、ここよりしばらく行ったところで黒姫山登山道と地蔵峠への道に分かれる。後者の道は昔から松之山脇街道と呼ばれ、松代方面から石黒を経由する柏崎への重要な街道であった。→参考資料-民具・馬の鈴


写真2011.6.18 折居  撮影 政栄


            芽を出すころ

写真2012.5.8 折居 

     池岸近くの浅い水位に自生するミツガシワ

写真 撮影日不明

                花期
写真2011.6.18 折居  撮影 政栄

              果実期

写真2011.6.18 折居

               草全体の様子

写真2011.6.18折居  撮影 政栄

                 逞しい根茎
写真2011.6.18 折居  撮影 政栄
解 説
ミツガシワ科
 北海道、本州、九州の山地の沼や沢などの湿地に生える多年草水草。
 地下茎は緑色(左下写真)で太く横に伸び所々から根出葉を出す。
 葉は長い柄があり柄の基部はサヤ状。葉柄は水面より10〜20pくらいの高さに伸びて葉を開く。
 葉は3個の小葉からなり、小葉には目立たない細かな鋸歯がある。質感は柔らかく厚みがある。形は卵状楕円形〜菱形状楕円形で長さ5〜10p、幅3〜8pほど。小葉には柄はない。
 花期は4〜8月(柏崎市は6月)根出葉の間から高さ30pほどの花茎を伸ばし頂きに6〜9pほどの総状花序を伸ばし白い花を十数個つけ下から咲き始める。小花の径は10〜15o。つぼみのうちは先端が桃紫色を帯びる。
 ガクは5裂して緑色。花冠は5裂し裂片の内面に白毛を密生する。雄しべは5個、雌しべは1本。株によって雄しべが長く花柱が短いもの、雄しべが短く花柱が長いものがあり花柱の長い方が結実する。
 さく果は早く熟し、5〜7oの球形で2裂する。種子は一つの果実に10個ほど入っていて円形でやや偏平、径2〜3oで黄赤色で艶がある。種子には小さな凹みが1カ所ある。
 名前の由来は3個の小葉がカシの葉に似ていることによる。



        花冠


写真2012.6.3折居

       花茎


写真2011.6.18折居 撮影 政栄

 果実と種子(未成熟段階 )

写真2011.6.18折居 撮影政栄

    細かい鋸歯

写真2011.6.18折居 撮影 政栄

     葉の茎の維管束

写真2012.6.3折居