クサネム

暮らしとの関わり
 子どもの頃に石黒川の川原でクサネムの群生に出会ったおぼろげな記憶がある。それがクサネムであったかカワラケツメイであったかわからない。とにかく数人で、その草を踏んで裸足で走り回ったとき柔らかな言うに言われぬ感触であったことを覚えている。
 カワラケツメイの他に石黒で見かけるクサネムに酷似した植物にネムノキの実生がある。
 これらの区別が今できるのは、未曾有の食糧難であった太平洋戦争敗戦前後にカワラケツメイをお茶代わりに飲んだお陰である。その時に上部の茎を折ってみて中空でないことを必ず確かめたからだ。
 今にして観察してみると成熟した豆果には、鞘に切れ目の溝があり、一つ一つバラバラになるところが面白い。厚い鞘で種子を包んで水に浮かせて流されて広く撒布するに好都合にできている。
 また、豆果側面の謎めいていた凸凹紋様もそれぞれが異なり見ていると興味が尽きない。(右下写真)あるいは、これは、水に浮いて流れて陸地に上がった時に引っ掛かり易くするための凸面であるのかも知れないなどと想像するのも楽しい。
 今年〔2012〕夏から柏崎の海浜植物を撮影して歩いたが、クサネムも多く見られた。豆果を包む鞘が成熟するとコルク質のように見えるので、中流の川原から、また、はるか石黒のような上流の水田から水流によって運ばれて海岸に流れ着いたものかもしれない。
 また、クサネムの種子は、玄米とほぼ同じ大きさのため収穫時に混入し易く除去が困難なため、等級を低下させてしまうので稲作農家には特に嫌われる野草である。

(写真上・右上2005.7.15居谷 右上2005.9.26上石黒)


     早朝のクサネムの葉−休眠中

写真2010.8.3下石黒

         稲の中に混生するクサネム
  写真 2022.9.18 新田畑

              田の畔に生えたクサネム
写真 2014.8.1 柳田

          クサネムの若い果実

写真 2006.7.8 下石黒

    初秋のクサネム(高さ80pほど)

写真 2009.9.1 大野原親子地蔵付近

        膜質の托葉

写真 2009.8.12 落合

          花後の様子

写真 2009.8.26 下石黒

     成長中の種子

写真 2009.10.15 大野

       つぼみ〜花〜果実の様子

写真 2022.9.18 新田畑

            果実の成長

写真 2014.9.9 藤元町

           海辺のクサネム
写真 2012.9.12 鯨波海岸

解 説
マメ科
 北海道から九州までの各地の水田や川の畔など湿地にはえる一年草
 茎は直立し無毛で滑らか、まばらに枝分かれする。上部は中空であるが下部は白いズイがある。高さ50〜90p。(下写真)
 葉は短柄があり互生し偶数羽状複葉で40〜60枚の偶数個の小葉からなる。カワラケツメイの葉に比べて柔らかい。小葉は20〜30対で長さ10〜15o。幅2〜3.5o。やや前方に傾いてつき両面無毛で裏面はやや白い。
 托葉は、皮針形で膜質で先端はとがり葉柄の基部より少し上につき長さ7〜12oである〔左下写真〕。睡眠運動をおこなう。〔下写真〕
 花期は8〜10月。葉のつけ根から短い花茎を出して1〜2枚の葉を出して淡黄色の小形の蝶形花をつける。小花柄の基部には皮針形の包葉がある〔上写真〕。花の長さ約10o。ガクは深く2裂し更に上裂片は3歯状に〔上写真〕、下裂片は2歯状に浅く裂ける。旗弁はほぼ円形である。雄しべ10個、長短まじり5本ずつ癒着する〔左下写真ではよく分からない写真準備中〕
 果実は豆のサヤ状で長さ3〜5p、幅5〜6o。4〜8個の節がある。側面の中央にシワがある。(下写真)節は熟すると離れて落ちる。中の種子は黒くほぼ卵形。〔下写真〕玄米と大きさがほぼ同等であるため混入しやすいために稲作農家にとっては厄介な野草。
 名前の由来は葉がネムノキの葉に似ていることによる。



     全体の様子

写真 2014.8.17 田塚

 睡眠運動中のクサネムの葉写真2006.7.8下石黒

     中空の茎上部

写真 2009.8.26 下石黒

    鞘の発達の様子
写真2010.8.12下石黒
   
   マメ果側面のシワ

写真 2009.8.26 下石黒

     まめ果と種子

写真 2009.9. 17大野

参照画像 カワラケツメイの種子