アキノノゲシ | ||
暮らしとの関わり アキノノゲシを石黒では、「ンマゴヤシ→馬肥やし」と呼び、飼いウサギ(食肉用)が最も好む草のひとつであった。ウサギのエサ採りは、どこの家でも子どもの役割であったので、子どもたちはアキノノゲシを目にすると、我れさきに採った。草丈が伸びたものは4〜5本採れば1日分の餌になったからだ。 アキノノゲシは、ハナニガナと同様、手折ると白い液が出た(下写真)。子どもたちは「乳が出る」と言ったが、この液が手につくと黒褐色になって洗ってもなかなか取れなかった。 秋になると、アンゴラウサギの毛のような真っ白な綿毛をつけた種子(右写真)が風にのって次々と飛び散った。 85才になった今も、アキノノゲシを目にすると思わず足を止めてしまう。今朝(2023.7.23)の散歩時、近くの国道8号線沿いの歩道と車道の縁石の隙間に生えたアキノノゲシ(右下写真)に足を止められた。そして思わず「あんた、こんな所に居るのか」と声をかけてしまった。いわぱ、今朝、出会ったアキノノゲシは私にとって「われ−なんじ」の関係であり、子ども時代に兎の餌として対峙していたアキノノゲシは「われ−それ」の関係であった。(※マルチン・ブーバー「われと汝の問題」野口啓祐訳) また、2015年の10月13日、吉田町在住の田辺家に「石黒村庄屋古文書」をお返しに行った帰りに、桐原から越後線の電車に乗った。ホームに立つとすぐ前の線路の脇にアキノノゲシが群生していた。 ここは、筆者が60年ほど前に8年間、駅ホーム前方1.5qほどの夏戸小学校への通勤で乗り降りした駅である。 時には帰路、駅まで未だ100mもあるというのに、列車が到着することがあった。そんな時には必死に手を振りながら走っていくと列車は待っていてくれた。そんなことを思いだしながら、私は遥か前方に見える校舎付近の懐かしい景色に暫くみとれていた。 目の前には、果実期を迎えたアキノノゲシが夕陽の中で綿毛を輝かせていた。いうまでもなく、彼らも、私にとって「われ−なんじ」の関係に他ならない存在であった。→写真 (写真上・2007.9.17上石黒石黒校付近背景建物は教員住宅 右中2005.8.29.右下板畑 右上2005.6.12板畑) 花 期 写真2014.9.14大野 茎の断面から出る乳液 写真2007.6.20寄合 総包〔花の基部の多数の包〕の形 写真上・2007.7.30落合 個体による葉の形の変化 写真上・2008.6.9下石黒
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解 説 キク科 全国各地の道ばたや山野に生える一年草または越年草。 根は紡錘形(下写真)。茎は直立して60〜200pにもなる。 根出葉は開花時には枯れ(下写真)、茎や葉はやわらかで互生し、基部はハルノノゲシと異なり茎を抱かない。 葉の形は羽状に分裂しないものもあり変異が多い。葉に裂け目のないものはホソバアキノノゲシとして区別することもある(左下写真)。 花期の頃には下部の茎葉も脱落する〔下写真〕。 花期9〜11月であるが沖縄では通年。先端が枝分かれして直径2センチほどの黄色い花を上向きにつける。花びらの先には裂け目がある(上右中写真)。 総包は開花前は円柱形だが花後は下部がふくらむ〔左写真〕。花は、日中だけ咲き夕方になるとしぼむ。 そう果は長さ5oほどで黒く、冠毛は純白色。 名前の由来は「秋に咲くノゲシ」の意味。 飼いウサギの餌に適した頃 写真2006.7.20下石黒 下葉が枯れて脱落する花期 写真2007.9.20下石黒 紡錘形の根 写真2010.6.25下石黒 多くの冠毛のある種子 写真2007.10.15下石黒 カボチャ畑に生えた個体 写真217.9.26 下石黒 市街地でも見られる個体 写真2023.7.22 松美町 |