スズメバチ
暮らしとの関わり
 石黒では、昔から家屋にスズメバチが巣をつくると金持ちになるという俗信があり、巣を駆除することはしなかった。家屋に巣をつくっても、とくに刺激しない限りは人を襲うようなことはなかった。しかし、家屋に巣を作ると、夜に灯りに誘われてたまに、家の中に侵入するので嫌われた。
 ところが、最近(2012)はカラスが中の幼虫を食べるために巣に穴を空けるなどしてハチを刺激することもあり危険だという。(下写真)昔は聞かなかったことである。(※ハチクマがスズメバチの大きな巣を持って飛翔する姿を中学生のころに見た記憶はある)
 また、昔から空(から)の巣をサラシに包んで風呂にいれると体がよく温まるとも言い伝えられた。筆者も子どもの頃にハチの巣湯に入った記憶がある。ハチの巣湯にするため、冬にハチの巣をとると中に1〜2匹の生きた蜂がいた記憶がある。
 さすがの子どもたちも、スズメバチの幼虫を取って魚釣りの餌に使おうなどとは思う者はいなかった。
 一度、巣をいたずらすると近づく人に対して攻撃的になってしまうので、とくに道路沿いのスズメバチの巣を悪戯することは危険であり固く禁じられていた。
 筆者の経験では、スズメバチは人を攻撃したときには針で刺すのみならず強力な歯で噛みつく。針と歯の両方の武器をつかって攻撃した。
 昔から、スズメバチは、オオスズメバチとともに、恐れられてきたハチである。
 キイロスズメバチ(左写真)が、ヤブガラシクロバナヒキオコシのハナなどの小さな花にとまって吸蜜している様子を時々目にする。また、コナラなどの樹液を吸っている様子も見かけることが多い。
これは、スズメバチの成虫の体の胸部と腹部の結合部分が極めて細い構造で固形物を通すことが出来ないため樹液や花の蜜を吸引するのだという。
 筆者の記憶では70代半ばまでは毎年、草刈りなどで蜂に刺されること1〜3度はあったがスズメバチに刺されたことは子どもの頃から今日まで5回ほどしかない。最初に刺されたのは小学5年生の時で道端の巣を悪戯され蜂が興奮している近くを運悪く通ったためであった。一緒にいた弟の手を引いて逃げたが幸い麦わら帽子を被った弟は刺されないで済んだ。しかし自分はイガグリ坊主頭のてっぺんを数か所刺された。家に帰って祖母に見てもらうと噛まれた跡も数か所あったという。痛みは心臓の鼓動に連動するようにズキンズキンと激しく、しばらく横になっていたことを憶えている。
 今の處、最後にスズメバチに刺されたのは65才の年であった。9月1日に白菜の苗移植の作業に石黒の畑を訪れた。仕事を始める前に畑の農具収納小屋の引き戸を開けて右足を踏み入れた途端に向うづねに痛みを感じて見ると、スズメバチが羽(翅)を立て「への字」の姿勢で口と針で攻撃している。
自分はとっさに首にかけていたタオルでハチを打ち払い戸を締めた。実は、以前から小屋の二階にミツバチが巣を作っていることは知っていたが、ここでスズメバチに急襲されるとは思わなかった。そこで、小屋の外の壁板に梯子をかけて小窓からのぞくと写真(→クリック)のよう意外な光景を目にして驚いてしまった。明らかにスズメバチはミツバチより後に巣を作ったことは違いない。隣のミツバチの巣は、固形物を直接に餌とする事の出来ないスズメバチにとって最高の食糧庫であったであろう。ミツバチの巣の下には夥しいミツバチの死骸が見られた。
 スズメバチにこのような習性があるかどうか分からないので、市立博物館に写真を送ったら「極めて珍しい」とのことであった。

(写真上 2005.9.5 落合  右上の上→キイロスズメバチ・2005.9.17 居谷  上の下→コガタスズメバチ 2006.9.20上石黒〕


           巣の-1

      カラスの被害を受けた巣-2

       カラスの被害を受けた巣-3

写真2008.11.30下石黒 屋号茶畑

   縁起をかつぎ座敷に飾られたスズメバチの巣

写真 2012.6.30 石黒

解 説
スズメバチ科
 本州から九州に分布。平地より山地に多い。
 働きバチの体長は17〜25p。体全体に黄色の斑紋が多く、全体に黄色に見える。
 巣は軒下や橋の下、板塀の間などの雨のかからない所に作る(左写真)。樹木につくることはきわめて希である。大きなものでは直径50p以上のものも珍しくない。
 巣盤数は5〜10層(左下写真)。幼虫の個室(育房)5千〜1万個。
 巣作りは5月半ば〜11月頃まで。春に越冬した雌一匹で巣作りをして次々と卵を産み時には数百匹(頭)の大群となる。
 幼虫の餌はハエやアブその他の昆虫類やクモ。それらを捕獲した親バチはそれを肉団子状にして幼虫に与えると幼虫はその一部を唾液状にして親に返す習性であるという。
 
 ミツバチの巣を襲い幼虫を食べることもよくある。性質は攻撃的。
 名前の由来はその体色による。



 樹液を吸う様子(ヒメスズメバチ?)

写真2008.8.20 下石黒 政栄

クロバナヒキオコシの小さな花の蜜を吸うキイロスズメバチ


写真 2005.9.17 居谷

          巣

写真2008.11.21下石黒

  コンクリート橋に作られた巣
写真2016.2.8上石黒克雪センター北側


参考画像→二ホンミツバチの巣の脇に巣をつくったスズメバチ→クリック

(2003.9.11下
石黒)