商売往来     (大橋一成家文書)  用語の手引き
   


天保丑年
商売往来

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商売往来
およそ、商売の持ち扱う文
字、員数の取り遣りの
日記、證文、注文、受取
 
 













大判


小判


南鐐上銀子 


丁豆板銀


灰吹
 
質入れ、算用帳、目録
仕切りの覚え也、まず、両替
の金子、大判、小判
一歩、ニ朱、金位品多し


所謂(いわゆる)、南鐐上銀子
丁(丁銀)、豆板、灰吹きなど、贋(に)せと
本手を考え、貫目分厘
毛払(ふつ)迄、天秤分銅をもって、
  荏-え→えごま
 
相違なく割符商売せしむぺき
なり、雑穀、糯(もち)、粳(うるち)、
早稲(わせ)、晩稲(おくて)、古米、新
米、麦、大豆、小豆、大角



豆(ささげ)、蕎麦、粟、黍(きび)、稗
胡麻、荏(え)、菜種(なたね)、廻船
数艘、積み登せ、問屋の
蔵に入り置き直段相場を聞き合わせ相
   ○水上口銭 



紗綾
 
残らず売り払うに於いては運
賃、水上げ口銭差引相
究め、都合、利潤の程を勘え(かんがえ)
出入りの損失


あらば、これを辨(弁)えるべし、譬(たとえ)ば味噌、酒、酢
醤油、糀(こうじ)、油、蝋燭、紙、墨、
筆など、その外綿布の類
金襴、繻子(しゅす)、緞子(どんす)、紗綾(さや)
          (以下略)
   
 
                  商売往来について
 往来物の一種。堀流水軒の作で、元禄7年(1694)に大阪、高屋平右衛門により刊行された。正確な年は不明だが、広島県三次市立図書館にある版本の本文末尾に「元禄七年五月中旬」とあり、元禄七年(1694年)頃に成立したと考えられる。
 美濃判1冊、一面1行。一行7字詰め。行書体で記し、片点・総ふり仮名つきの読本用教科書の体裁である。流水軒は京都の手習い師匠、本書とともに流布した手本「正徳御条目」「寺子教訓書」の編者でもある。
 内容は商取引に関する帳面類、貨幣、商品、商品、商人生活に必要な教養と教訓の4部より成り、特に衣料、食品食物、家財道具、薬種香料などの諸分野に及ぶ、商品関係語彙を296も列挙し、商人生活の心得中で勤勉、節倹、正直の諸徳を強調してあるのが特徴といえる。
 このため、本書は、商人のみならず生産者、消費者の日常生活にも役立つ教科書となり江戸時代後期、幕末期にかけて200種以上の版を重ねて庶民の家庭や寺子屋で広く学ばれたのみでなく「問屋往来」「万祥廻船往来」など、さらに明治初年には橋爪貫一著「世界商売往来」をはじめとする貿易教科書など夥しい類書を世に送り出した。
 ちなみに、商売往来は、実業に関する往来物(商業、農業、工業などの職業に関するもの)のなかでもっとも早く成立し、多くの往来物の編集方法や内容に大きな影響を与えたといわれる。

(参考文献-国史大辞典・他)
 
 読み下し文・用語手引き文責 大橋寿一郎