ツリガネニンジン | ||
暮らしとの関わり ツリガネニンジンを石黒では「ノノバ」と呼んだ。正確に言うなら「ツリガネニンジンの若芽をそう呼んだ」というべきであろう。成長したノノバの姿など知らない人がほとんどだったからだ。 夏になると道ばたにツリガネニンジンの花をよく見かけたがそれがノノバの花であることは知っていた人は少なかったであろう。(下写真)。 ノノバは、石黒ではフキノトウに続いて春早く食卓にのる山菜である。 大雪の年でも、寄合集落や板畑集落の春祭りの4月15日には、旬の食材としてご馳走に用いられたものだった。早い年には、3月の下旬に高い山のヘラ(斜面)で採取出来るという。 山菜としては上左写真の頃が最適、食味は、一種独特の香りがあり、甘みがある。繊維質が多いためか食後にオナラが出ると言われ、若い娘は敬遠したという。 本種に近い山菜にソバナがあり、石黒では「フキタチ」と呼んだ。こちらはツリガネニンジンに比べ、あっさりとした食感であった。 海岸近くで見られるツリガネニンジン(下写真)は葉が少し厚く、茎等に毛が見られない。ハマシャジンと呼び区別する例も見られるようだが、今後もう少し比較観察をしてみたい。 (写真上2004.4.30下石黒 右上2005.8.29大野 右下2005.10.17板畑) ツリガネニンジンの若草・輪生する葉 (写真2009.5.8寄合) 全体の毛・茎の白乳液 写真2009.5.12寄合 花期-1 花期-2 雌しべと雄しべ・線形のガク片 (写真2007.8.16 落合) 花から果実へ 写真2007.8.16 落合 海岸のツリガネニンジン 写真2012.8.23 柏崎海岸 右奥はエチゴトラノオ 果実期 写真2014.9.23下石黒 政栄(※手で持って撮影・普通は撓った状態)
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解 説 キキョウ科。 北海道から九州の各地に自生する多年草。 根は茶白色で肥大して地下深く直下する(下写真)。 茎は、成長すると60〜120pにも達し全体に毛があるものが多い。切ると白乳液が出る(左写真)。 葉は、茎の節に3〜5枚輪生し、先は鋭く尖り、葉の周りは鋸歯がある〔左下写真〕。 変種が多く葉の形は様々なものが見られる。 根生葉は円心形で長い柄があるが花期には枯れ落ちてしまう。 花期は8〜10月。茎の先端に互生または輪生する小枝をひろげ鮮やかな青色の5裂した釣鐘形の花をつける。ガク片は線形、花中には5個の雄しべがあり花柱は1本で花冠の外に突き出る〔左写真〕。 名前の由来はこの根が朝鮮人参の根に似ていたことからこの名がついたという。(下写真) 葉裏 写真2010.9.25下石黒 ツリガネニンジンの根 写真2010.5.19寄合 政栄 つぼみ 写真2005.8.2 大野 毛のある茎葉とつぼみ 写真2011.8.21 下石黒 花の形 写真2007.8.16上石黒 無毛で葉の厚い海岸の個体 写真2012.8.23 柏崎海岸 果実と種子 写真2014.9.23下石黒 政栄 写真2010.9.25寄合 |