トチバニンジン〔ソウシシヨウニンジン〕 | |
暮らしとの関わり 石黒では、杉林やブナ林の林床に、よく見られる植物であるが、どこにでもというわけではない。 子どもの頃、初秋のひんやりとした空気のブナ林で、トチバニンジンの紅い実を初めて見たときの感動を忘れない。 とくに実の頭部の黒が、朱塗りの漆に黒い紋様を入れたような味わいがある。この黒い紋様のあるものはソウシシヨウニンジンと分類される場合もある。 春のブナ林には、このトチバニンジンにそっくりなコシアブラの実生が見られる。(右下写真) ところで、トチバニンジンの花について牧野図鑑には「枝上の花は全部雄性花である」とある。「枝」というのは花茎の芯をなす花冠の軸枝以外の花冠の軸を指すのであろうか。しかし、秋の結実は芯軸の枝のみならず他の枝にもみられる。とすると、その意味は、雄花先熟であり、まずすべての枝に雄花が咲きそれが雌花に変わるという意味であろうか。 詳しい方の御指導を乞いたい。 今日〔2014.8.10〕下石黒の道普請の作業中にブナ林の縁に赤い果実が目を引いた。近寄って見るとトチバニンジンであった。二株が並んで生えていたが成熟の差で赤実の株と青実の株が並んでいる様を面白く思った。 (写真上2005.6.18上石黒 右上2005.6.23上石黒 右下2005.10.27大野) 幼苗(右下) 写真2011.5.23 上石黒 小群生 写真2011.7.8上石黒 葉柄と葉の縁の鋸歯 写真2011.7.8上石黒 葉の裏と表 写真2011.7.8上石黒 雄性期と雌性期があるのであるのであろうか 写真2005.6.18上石黒 茎と根茎 果 実 期 写真2014.8.10下石黒 写真2005.8.29上石黒 晩秋の頃の姿 写真2014.10.26下石黒 |
解 説 ウコギ科 全国の山中の林床など日影に自生する多年草。 根茎は長くやや太く白色で節があり節ごとに茎のついた跡が残っている(左下写真)。 茎は1本立ちで根茎の先端から直立する。高さは40〜60p。 葉は茎の頂につき5小葉からなる掌状複葉で長さ15〜25p(柄を除く)。小葉は頂片が最も大きく縁には細かい鋸歯がある→参考画像。花序軸基部と小花の柄基部には線形の苞がある〔下写真〕。 花期は6〜8月。茎の先から1〜4個の枝柄を出して球状の散形花序をつける。花は淡黄緑色で小さい〔上写真〕。また、花柄は1〜2p。花柄には微突起がある〔下写真〕。包はごく小さい。 花の径は3o。花序の下側から咲く、花弁は淡緑黄色で5個、雄しべは5個に2個の花柱とその下に子房がある。 果実は球形で集まってつき赤く熟する。ときにはその先端に黒い紋様がつく〔上写真〕。 果実に黒い斑紋のあるものをソウシシヨウニンジンという名前で分類することもある。 名前の由来はトチの葉に似ていて地上部が朝鮮人参に似ることによる。 花穂の微小突起 写真2005.6.18下石黒 写真2005.8.29上石黒 雄性期の花と雌性期の花 雌性期の花 写真2005.6.23上石黒 花序柄の基部の線形の苞 写真2011.7.8上石黒 写真2013.6.20上石黒 青実から赤実へ 2014.8.10下石黒 漆器を想わせる美しい果実 写真2005.8.29上石黒 ※比較画像-コシアブラの実生 写真2006.6.14上石黒 ※比較画像-トチノキの葉 (右小葉一部欠損) 写真2007.6.2寄合 |