シャガ | |
暮らしとの関わり 石黒ではシャガを「ウマショウブ〔馬菖蒲〕」と呼んだ。 シャガは、家の周りに植えられたものがほとんどで、山道などで見かける小形のものはヒメシャガである。筆者の生家の土蔵の周りにも沢山のシャガがあり、子どもの頃から親しみを持った花のひとつである。1日花であるが、色彩、形ともに上品で印象に残る花である。 シャガの方言名「ウマショウブ-馬菖蒲」の由来は、田かき馬の「マングワ」(四季の農作業田かき参照)の引き綱と馬の腹の間に挟み摩擦防止にシャガの葉を挟んだことによる。(チマキ笹の葉を使う人もあった) 今年の春〔2009・4〕に政栄氏と泊山を訪れると、数十年前に放棄され、原野にかえった水田跡にシャガが、あちこちに生えていた〔下写真〕。泊山は下石黒の作場としては最も遠くにあり、徒歩で片道1時間近くかかった。筆者が中学生のころ、泊山に作場のあった村人から、農繁期には馬も連れて行って小屋に泊まって農作業をしていると聞いて、さぞかし夜は淋しいものであろうと思った。その人の話では、馬がいると余ほど心強いものだとのことであった。 この作場の地名が「泊まり山」であることから、昔から、農繁期には泊まって仕事をした作場であったことが分かる。 このシャガは、おそらくその作場の田かきに使うために植えたものが野生化したものであろう。それにしても、放棄されて十数年たち原野に還った自然の中で逞しく生き続けているシャガの姿に感動を覚えた。 今年(2017)の春の道普請のおり、屋号「いわかた」の近く道路沿いに咲いているシャガの花(下写真)を見て、70年前の少年時代のことを思いだした。「いわかた」には今は亡き親友がいてよく遊びに行ったが、そのころ(1950年頃)から道沿いの斜面にシャガの群生があったように記憶する。 夏季には「ひるあがり」といって昼食は家に帰って食べたが、その行き帰りも常に2人は一緒であった。その折に、下写真の橋の上から川面を眺めてハヤが群れて泳ぎ回る様子を見て、下校後、2人でよく釣りをしたことも楽しい思い出である。 ビデオ資料-石黒川のウグイ (写真2005.5.20下石黒) 花期 写真2010.5.17下石黒 泊山のシャガ 写真2009.4.18泊山 晩秋のシャガ 写真2011.11.17下石黒 地下ランナーにより繁殖する 写真2013.6.2下石黒 村道沿い斜面に昔から見られるシャガ 写真 2017.5.20 下石黒-屋号イワカタの下の道 |
解 説 アヤメ科 本州から九州の家の周りや山地の影地斜面などによく見られる常緑多年草。高さ30〜50p 根茎は浅く地下をランナーとなって伸びて枝分かれして繁殖する。〔左下写真〕 葉は深緑色で厚く長さ30から60p、幅2〜2.5pの剣形で光沢がある。下面はわずかに淡色〔左下写真〕。 花期は5〜6月、葉間から出た花茎が上方で互生に枝分かれし(下写真)多数の花がつく。花茎の長さは30〜70p。 花の径は5p内外で淡紫をおびた白色。外花被片は倒卵形で縁には細かい鋸歯がある。また、中脈に沿って黄橙色の斑紋があり、とさか状の突起となり更にその周りに青紫色の斑点がある。〔下写真〕 内側の花弁は先端が浅く2裂して縁には細かい切れ込みがある。〔下写真〕雄しべ3個は花柱の背面にあり先端は2つに分かれ各片は毛状に切れている。〔下写真〕 子房は下位、緑色、内に卵子があるが三倍体であるため熟さないので果実には種子はできない。 名前の由来はヒオウギの漢名「射干−しゃが」(花は似ていない)によるといわれる。 外側花弁拡大 内側花弁拡大 写真2005.5.20下石黒 光沢のある葉 真2013.6.2下石黒 葉裏は淡色で光沢が少ない 写真208.9.19下石黒 基部の様子 写真208.9.19下石黒 互生につく花枝写真2010.5.17下石黒 花期の様子 写真2015.5.20 下石黒 根茎を伸ばし木にのぼる個体 写真2013.4.25岡野町安蔵田 |