シュンラン〔ホクロ〕

暮らしとの関わり
 石黒ではシュンランを「ラン」と呼んだ。石黒には「希に見られる」と言ってよいほど少ない植物である。
 また、シュンランは、スハマソウとともに石黒でも昔から鉢植えにした数少ない野草の一つである。
 しかし、それは盆栽趣味というより、豪雪地帯の石黒で暮らす人々が、1日も早い春の到来をシュンランやスハマソウの花に托したものであった。家の中で開花させ一足早く、待ちに待った春を味わったものであろう。
 シュンランは花葉ともに地味な植物で野にあっては人目をひくことは少ないが、鉢に植えて眺めると味わいのある植物である。花の模様も一様ではなく個性があるのも魅力の一つである。別称「ホクロ」の由来は、この紋様による。
 ちなみに、もう一つの別称「ジジババ」は、蕊柱を男性器に、唇弁を女性器になぞらえ、一つの花に両方が備わっていることからつけられた名前との説もある。(右下写真)
 昔から愛好家が多く、江戸時代から投機の対象になったほどであるといわれる。
 
(写真上・右下2007.4.28下石黒 右上2004.12.2下石黒)


              花芽(2月下旬)

写真2015.2.19 松美町

                花期

写真2008.5.29下石黒
               花 期

写真2019.4.5 松美町

             花茎を伸ばす

写真2021.3.25 松美町

           葯帽の中の花粉塊

            花粉塊の拡大写真

写真 2021.3.13 編集会
   
              花のつくり



写真2004.5.2下石黒

             花後の様子

 写真 2020.4.27 松美町


解 説
 ラン科
 北海道から九州の山地の乾燥した斜面に多く見られる常緑多年草
 根茎は粗大で白色で肉質。
 葉は束生線形で縁には細かな鋸歯があり長さ20〜35p。幅6〜10o。先は鋭くとがり強靱で基部は鞘となる
〔左下写真〕
 葉の多くは2列の扇状に出て先は湾曲する
〔左下写真〕。葉の色は普通暗緑色であるが場所と時季によっては黄緑色のものもある。
 花期は3〜4月。早春、長さ10〜20の花茎の先端に1個の花をつける。〔希には2個〕
 花の径3〜4pで、外側の3枚のガク片と内側に2枚の花弁と巻き状となる唇弁〔しんべん〕1枚がある。
 唇弁は白色に濃紅紫の斑点〔シュンランがホクロと呼ばれる由縁〕があり
〔下写真〕中央付近に小形の側ガク片、及び突起がある。蕊柱〔ずいちゅう〕は長さ15o、先端に白色のヤク-葯があり黄色の花粉の塊が2個(私見では1個が2分されるようだが?)ある〔左下写真〕。シュンランの受粉生態は十分明らかになっていない。
 変種も多く昔から愛好家が多い。現代のアカバナ系の元の一つは昭和14年に本県村松町で発見されたものと伝えられる。
 牧野日本植物図鑑にはホクロ〔シュンラン〕という見出しで載っている。
 名前の由来は、唇弁にある斑点をホクロに例えたものという。



 扇状に出て先は湾曲する葉

写真2004.5.2下石黒

   サヤとなる葉の基部
写真2004.5.2下石黒

    花芽(2月下旬)-2

写真2017.2.17松美町

   花芽(3月上旬)-2
写真2021.3.6 松美町

     つぼみの頃

写真2011.4.12下石黒

        横姿
写真2019.4.5 松美町


     葉の縁の鋸歯
写真2004.5.2下石黒


   唇弁の斑点〔→ホクロ〕

写真2004.5.2下石黒

      蕊柱と唇弁
写真2004.5.2下石黒