ノキシノブ
暮らしとの関わり
 子供の頃、近くの山に門松や小正月の花木にするダンゴノキ(ミズキ)やヤマモミジの枝を取りに近くの山に出掛けた。
 当時は、月遅れの小正月〔2月15日〕であったので深い雪の中であったが、ケヤキブナの古木の幹に生えたノキシノブの葉に出会うと、久しぶりに見る緑色の草に足を止めて眺めていたものだ。(下写真)
 冬の大好きな子どもの心にも、草木の芽吹きの春を待つ気持ちがうごめきだしていたのだろう。
 ノキシノブは木の根元ばかりではない高い枝にも見られる〔下写真〕。どこにあっても小形ながら一種の風格を感じる不思議な植物である。→参考写真
 
先日、市街地周辺の集落内で石仏に生えた群生したノキシノブを見た。→参考写真
 希には岩上や地表にも見られるが急傾斜で土砂がたまらないようなところに限られる。

(写真2005.4.14寄合 右上2005.3.8下石黒雪上)



       コケ類と相性のよいノキシノブ

2014.10.19北条西方寺境内

           雪の中のノキシノブ

写真2005.2.27大野

            葉裏につく胞子嚢

写真2015.2.22茨目

     葉の裏側の胞子嚢と中軸

写真2005.11.25寄合

        岩上に生えたノキシノブ

写真2006.10.14上石黒

     10mほどの高い樹枝に生えたノキシノブ

2007.9.16落合
解 説
ウラボシ科
 常緑多年生シダ植物。北海道南部以南の日本各地の平地、山地の樹皮上、崖面、岩上などに見られる。着生植物
 根茎は長く走出枝を出し、径2〜3oほどで密に鱗片つける。
 葉は長さ12長さ12〜30p。質は革質で幅10〜15o。中ほどから上の部分が最も幅広く先端に向けて次第細くなる。柄はごく短い。
 全縁で乾くと縁が反曲し乾燥に対応する(写真準備中)。上面は濃い緑色。中軸は両面とも明確〔左写真〕
 胞子嚢は葉の下面の上半分に中軸に沿って2列に並んでつく〔左写真〕。大形で丸く成熟時には接近し時には接続する。
 名前の由来は軒先に生育し土がなくとも堪え忍ぶの意味。



  ブナの木イワガラミとともに

写真2009.5.23下石黒

ケヤキの幹に一面に生えたもの
写真2010.10.20平井

     幼苗(樹皮上)
写真2010.10.8下石黒

  胞子嚢と胞子の拡大写真
顕微鏡写真 2012.5.21