ミズオオバコ | |
暮らしとの関わり 石黒では「ミズオンバコ」と呼んだ。 昔は、田の雑草として嫌われるほど多く見られたが農薬などの影響で激減し最近ではごく希な水草となってしまった。 水田に敷いたようにミズオオバコが繁茂した光景を見たのは筆者の年代が最後ではなかろうか。 石黒で見られるミズオオバコの花はほとんど白色に近い。よく見ると花は清楚にして気品があり美しい。 たまに放置された田や水溜め池で花期の群生に出逢うことがある。→上写真・参考写真(落合) 時には水面一面に咲いた白い花を、モンシロチョウの群れかと一瞬驚いたこともあった。 現在では放棄田も原野にかえり、石黒では2箇所にしか確認できない。 地方によっては絶滅危惧種に指定されていることから、減少は全国的な現象であろうと思われる。 どこでも見られた子どもの頃は憎き雑草に見えたが希少種となった今では、たまに出会うと胸が高鳴るほどの喜びを感ずる。稲作の害草であったとはいえ、我々と共に生きてきた身近な植物であるのだから無理もない。その絶滅を何としても避けたいと思うのは人としての当然の心情であろう。 ミズオオバコの受粉についてはもっぱら自家受粉に頼るものか、昆虫の訪花はあるのか、あるいは、水媒によるものかは筆者には分からないが、今後調べて見たいものだ。 先日(2011.9.27)畔屋地内で深さ1mほどの用水池に生えていた花期の数株のミスオオバコが根を池の底の地面から離して水面に花を咲かしていた。外部の力が加わって根が引き抜かれたようには見えなかった。筆者には水面まで花柄を伸ばすことができないことで自然と根を離して花冠を水面に浮かしたのではないか、などと想像してみたがその可能性もないことはないと思うがいかがであろうか。詳しい方の御教示を賜りたい。 (写真2005.10.7 落合) 水中の様子 写真2006.10.17上石黒 花期-1 写真2007.9.17畔屋 花期-2 写真2007.9.23落合 全体の姿 写真2005.10.7 落合 深い池の大きな個体 写写真2011.10.4 嶺 |
解 説 トチカガミ科 北海道を除く日本各地の水田や池などに沈水して生える一年草でオオバコに似た葉をもった沈水植物。 茎は短く葉が集まってつく。植物体のサイズは水深によって著しく変わる。水田などの浅い水中では葉の長さ10p以下で深い水中では50pを越える。ふつう、長さ8〜18p、幅2〜12p。 葉は、その名のとおりオオバコに似ているが薄く破れやすい。 花期は8〜10月。葉の間に長い四角の花茎(下写真)を出し、頂に径3pほどの花を水面に開く。薄いピンクを帯びた三枚の花弁をもち、長さ1〜3p。雄しべ3〜6個、花柱3〜6個。子房は3〜9室で外側に縦に翼状のヒダがある(下写真)。花の下部には筒状の包がある。(下写真) また、包には波状の縁がある。(下写真) 花は両性花で受粉が昆虫を媒体として行われるかどうかは不明であるという。 両性花をもつ株が普通であるが九州で雄花のみの株が知られている。 果実は長楕円形で長さ2〜5p。受粉した花は水中に沈んで実をつける。 種子は長楕円形で1.2〜1.5o、幅0.5o。表面に細毛を密生する。(細毛は種子を水に浮かせて散布するため) オオミズオオバコは環境による変異とされる。 名前の由来は形がオオバコに似ていて水の中に生えることにによる。 つぼみ 写真211.11.4上石黒 花の下部の筒状の包 写真2005.10.7 落合 包葉の翼の波状の縁 写真2005.10.7 落合 四角の花茎 写真2011.10.4 嶺 雌しべ3本と雄しべ6本 写真2005.10.7 落合 |