モンシロチョウ
暮らしとの関わり
 蝶の中で、憎まれたり嫌われたりするのはモンシロチョウくらいのものではなかろうか。
 とくに、キャベツの強害虫である。幼虫はキャベツの色と同色のため目立たない。うっかりするとキャベツの葉が網状になってしまう。
 石黒では、昔から今もエゾスジグロチョウやスジグロチョウと区別しないで見てきた。調べてみると区別点としてエゾスジグロチョウの特徴は、次のようなことがあげられている。
@林のあるやや日陰に多い
A白い羽に紋はなく黒い筋が多い。
B食草はイヌガラシやタネツケバナ。
 モンシロチョウの雄雌の違いは、メスがやや大きいことと前ばねの付け根の黒い部分が広い。〔上写真参照〕
 交尾は横に寄ってきた雄に尾部を横に曲げて差し出して行う。拒否するときは右下写真のように尾部を背側に直角に立て横から雄がよってきても交尾できないような体勢をとる。

〔写真2006.7.1上石黒〕

          交尾を拒否する雌


写真2006.6.30上石黒

解 説
シロチョウ科
 世界中に分布する典型的なシロチョウで日本全国に見られる。
 開帳は5cm前後。春型は小さく雄は雌より小さい。前ばねに黒い紋がある。
 日本には縄文時代の終わりにアジア大陸から栽培植物とともに渡来したという説が有力である。
 森林は好まず明るい畑や荒地を好む。
 幼虫はキャベツや大根の葉を選んで食べる。幼虫は4回脱皮してサナギになる。
 寒冷地では年2〜3回、暖地では6〜7回発生を繰り返す。発生時期は3〜10月。サナギで越冬する。
 名前の由来は白色のはねに黒い紋があることによる。


※左下のような交尾拒否の姿勢の雌をよく目にする。これは、すでに交尾の済んだ個体の行動である。この姿勢では雄が横に並んで交尾できない。



 小林清之助さんの「蝶合戦」という随筆によると、モンシロチョウは300〜400年ほど前に渡来し在来種のスジグロチョウと一種の縄張り競争をくりひろげて栽培植物を食草としたために優勢となりスジグロチョウを丘陵地に追いやった。
 その後、殺虫剤使用の普及によりモンシロチョウの個体数が減りスジグロチョウが再び平地に戻って来たのではないかと記されている。
 また、敗戦直後(1945)、バラックと野菜畑ばかりの新宿や池袋などにモンシロチョウが大発生して歩いていても顔にぶつかってくるほどで、まさに蝶合戦の様相であったことも記されている。
(日本の名随筆35巻)