コブナグサ
暮らしとの関わり
 除草剤のなかった昔は、田や畑の縁にコブナグサがびっしりと生えたものだった。
 茎は意外と長く、倒れて節から根を出して立ち上がり枝分かれするため絡まるように繁茂する。
 とくに秋、穂が出る頃になると、石黒の方言でいう「やばしい」感じのする植物である。上の写真のように、いかにもだらしない様子のことである。鎌で刈ると刃に絡まってうまく刈り取れなかった記憶がある。
 2010.9.26日に上石黒から落合への国道から少し入ったところの荒らし田一面にコブナグサの群生が見られた
 実は、今年〔2010〕ここを訪れたのは、ここで2007年にヒメミカンソウを撮影した場所であり再度撮影するためであった。
 2007に訪れた時にはアメリカセンダングサが支配しその中にヒメミカンソウが散在していたが、今年はその両者の姿は見られず、全面をコブナグサが覆い尽くしていた。→下写真
 ただ、奥の隅の湿地にガマとサンカクイが数本見られだけであった。
 出来るだけ、入念に調べたが目的のヒメミカンソウは終に発見できなかった。しかし、石黒ではごく稀ににしか見られないコシロネが径1mほどの小群生となって三カ所にわたって見られた。
 おそらく、また数年でこれらのコブナグサも他の野草と入れ替わるのであろう。

(写真上2005.9.29下石黒)


              大群生

写真2010.9.26上石黒

          紫色を帯びた穂の個体群

写真2011.10.9下石黒

    
          小穂のつくり

写真2010.9.28
                 
 草 姿

写真2005.9.26下石黒
  
           紫褐色の穂の個体

写真2007.10.18大野

解 説
イネ科
 全国各地の田の畔や野原に普通に見られる一年草
 茎の下部は地面を這い節から根を出して上部は直立し枝分かれする。高さ30〜40p。
 葉は互生し形は狭い卵形で基部は茎を抱く。(右上写真)長さ2〜6p、幅1〜2.5p。葉鞘には粗い毛がある。(下写真)両面は無毛またはまばらに毛がある。葉の縁にはヒゲ状の毛がある〔下写真〕
 花期は9〜11月。茎先に掌状の穂を出す。穂は5〜10本の穂軸に分れ、各軸の節々に小穂がつく。(右上下写真)
 掌状の穂の色は白緑色から黒紫色まで様々なものが見られる。
 小穂は披針形で長さ4oほど。第1包穎は舟形厚みがあり数本の緑色の脈が走る。第2包穎は形は同じだが透明な皮膜、は第1包穎の2倍ほどの長さがある〔写真左上〕
 名前の由来は葉の形をフナ〔鮒〕にたとえたもの。
 八丈島ではカリヤスと呼ばれ名産の「黄八丈」の染料に使われる。



       掌状の穂
写真2005.9.26下石黒

     葉鞘の粗い毛

写真2007.10.4下石黒

    節から出る小穂

写真2007.10.4下石黒


     節から出る根

写真2010.9.26上石黒

     包頴脈上の細毛

2010.9.28