キショウブ
暮らしとの関わり
 筆者の子どもの頃(1940年代)は屋敷内にキショウブを植えておく家が多かった。日本古来のハナショウブと異なり植え替えをしなくとも花が咲き続け栽培が容易であったからであろう。
 その性質の強さゆえに、数十年前に離村し家屋もすでに跡形なくなった屋敷跡の草むらに、野生種のようにたくましく今も生き続けている。
 石黒でキショウブの花やシャガが見られる草地は、かつて家のあった所であることが多い。
 筆者の経験では、地下茎が太く良く分岐しているせいか、夏季に雑草と一緒に刈り取っても翌年にそれほど株が弱ることもない。のみならず除草剤に対しても周りの雑草に比べて強いようだ。
 ちなみに、本種はキショウブという名前ではあるが、ショウブとは科の異なる植物である。
 キショウブやハナショウブは、アヤメ科に属する。一般にこれらも「ショウブ」と呼ばれるが、ショウブとは、石黒で「ヨタテショウブ-湯立てショウブ」と呼ぶサトイモ科の植物のことであり、花はガマの穂状の似ても似つかない形をしている。何れも漢字の「菖蒲」で表記するのが混乱のもとになっている。

(写真上・右上2005.6.9寄合 右下2005.10.13寄合)


            キショウブの群生

写真上2007.6.13寄合

     キショウブの花のつくり

写真上2007.6.13寄合

        屋敷跡に咲くキショウブ

写真上2005.6.21落合

解 説
アヤメ科
 日本各地の湿地や水田の溝などに繁殖する多年草。
 明治30年(1897)頃にヨーロッパより輸入され栽培されたものが野生化して広がった。要注意外来植物
 根茎は短く大きくよく分枝する。
 葉は長い剣形で主脈は隆起し(下写真)質はやや軟らかい。幅は2〜3p、長さは1mに達することもある。
 花期は5〜6月。花茎を出して黄色の花をつける。
 下位子房は円筒状で緑色。外花披片〔萼〕は3個、大きい広い卵形で先端は垂れ下がり基部は褐色の条線がある〔上写真〕
 内花披片〔花弁〕は3個、小さな長楕円形で直立する。花柱は基部が細く糸状であるが急に広がって3つに分かれ広線形で平らに開き(左下写真の「雌しべ-花柱分枝の部品)各分枝は更に2裂して狭卵形、細かな鋸歯のある裂片に終わる〔左下写真〕。3個の雄しべは花柱の分枝下に接している
 さく果は多少垂れ下がり三角柱状で先が尖り3裂して褐色の種子を出す。(下写真)
 名前の由来は花の色による。



 柱頭の下にある雄しべ
写真2016.5.12下藤井

   キショウブのさく果

写真2005.10.13寄合

    隆起する主脈
写真2009.6.1下石黒