キッコウハグマ

暮らしとの関わり
 キッコウハグマは、石黒では、希にしか目にしない植物の一つである。
 筆者は城山の寄合に通じた旧道の尾根づたいの山道で確認したのみである。いたって小形の野草であるが根元から輪状に葉を伸ばし、その葉がウリの葉のような形をしていて人目をひく。ここ(城山旧道)では、ヌカボシソウと混生している。(下写真)
 ちなみに、この道は城山(※石黒城)西側の尾根にあり、昭和初期までは、寄合への主要な道路であった。
 筆者の生家からこの尾根が眺望できた。落葉後の初冬から早春までは、そこを上って行く人々の姿がはっきりと見えたものであった。「おお、郵便屋さんが上って行ぎゃっしゃら」などと言いながら祖母が曲がった腰を伸ばして眺めていたことを憶えている。→峠の旧道位置画像
 いまでも、ブナの木々を縫うようにしてつけられた古道には人の温みが感じられ、筆者は植物の撮影でここを通るときには必ず一休みする。この小形な野草キッコウハグマとも、腰を下ろして目線を下げたからこそ出会うことができたのだった。
 キッコウハグマは、普通の花と同時期に閉鎖花をつける珍しい植物の一つであるといわれている、現在掲載の写真はすべて閉鎖花であると思われるので、今後、解放花を撮影したい。

写真2011.10.4下石黒城山


              葉裏と根の様子

写真2011.10.4下石黒城山

     ヌカボシソウと混生するキッコウハグマ

写真2011.10.4下石黒城山

解 説
キク科
 北海道から九州に分布する小形の多年草。山のやや乾いた木陰に多い。
地下茎は細く長く横にはう。
 茎の高さは10〜30p。
葉は茎の下部に5〜10枚ほど集まって互生する。茎葉ともに目立つ毛がある。 葉柄は長く葉の長さの約2倍。葉身の形は亀甲形または五角形。
 花期は9〜10月。集まった葉の基部から10〜20pの花軸を伸ばし、10個内外の頭花をつける。
 花柄は1〜5oほどあるが穂状に見える。各頭花には白い5裂の管状花が3個ずつあって一輪の花のように見える。花冠の裂片は反曲、総包は筒状で長さ10〜15o。筒部は約4.5o。
 普通の花と同時期にしばしば閉鎖花がみられる。
 そう果は長さは約4.5o、密生した細かい毛がある。茶褐色の羽状の冠毛があり長さは7o。
 名前の由来は葉の形が亀の甲に似ていることによる。



       閉鎖花

写真2011.10.4下石黒城山