ケキツネノボタン
暮らしとの関わり
 ケキツネノボタンやキツネノボタンは、果実が独特の形をしているため子供のころから親しみをもった植物であった。
 とくに太平洋戦争敗戦(1945)前後の食糧難の時代には子供たちに、果実の形がコンペイトウを連想させた。
 子ども達は、果実のついた枝を手折り、親指と人差し指の爪で、相手に向けてはじき飛ばして遊んだ。
 また、飼いウサギの餌取りが受け持ち仕事であった当時の子ども達はキツネノボタンが毒草であることは聞かされていた。
 花と果実が一本の茎で同時についている珍しい野草の一つでもある。花は、光るような鮮やかな黄色で美しい。
 上の写真は下石黒地内の石黒川付近で撮った。ウマノアシガタほどではないが撮影時はハレーション(白とび)に注意が必要な花である。

(写真2004.6.18下石黒)


             花のつくり

写真2009.5.17下石黒

      キツネノボタンとの果実での区別
ケキツネノボタンの果実 キツネノボタンの果実
 実の先がケキツネノボタンは曲がっていない(右と比較)
 写真2006.6.6
 写真2005.6.30
※植物検索研究会の最近のサイトによれば、上記の花柱の先端の曲がりは区別の根拠にならないとしている。このサイトで示されている資料を参考に区別点をまとめてみた→区別の手引き 
        
         ケキツネノボタンの群生


写真2006.6.6下石黒

            根生葉

写真2009.5.29下石黒

       茎の基部の葉と上部の葉

写真2009.5.29下石黒

      群生する果期のケキツネノボタン

写真2007.6.29下石黒
解 説
キンポウゲ科
 山野の道端の湿地に普通に見られる越年草。草全体に粗い毛が密生する〔左上写真〕。有毒植物。
 茎は少数群がり立ち、まばらに分枝して円柱形で中空〔下写真〕。高さ20〜80p。開出毛がある(キツネノボタンとの区別点)。
 根生葉は長い柄のあり〔左下写真〕茎葉には短い柄がある。葉柄の基部は鞘となる〔上写真〕小葉は3小葉からなり、2〜3裂する〔左上写真〕
 縁には不規則の鋸歯がある。
 花期は5〜6月。茎や枝の先に艶やかな黄色い花をつける。
 花は径12oほどでガク片は5個、内側にそり返り凹面となり淡緑色〔下写真〕。楕円形で先端は円形全縁で外面に多少毛がある。
 花弁は5個で平らに開き艶がありやや細い倒卵形で縦に細い脈がありガク片よりやや長い。先端は円形全縁で基部に1個の小さな鱗片があり蜜をためる場所となっている。
 雄しべは子房よりも下につき色は黄色で多数つく。花糸は糸状ヤク〔葯〕は楕円形、雌しべは多数が集合している。子房は無柄で長卵形。花柱は短く先はほとんど曲がらない。
 そう果は5〜6月に熟し、径10oほどのコンペイトウ状球形に多数が集まって塊となる集合果。熟した果実に触ると粘液を出して肌に付着する〔下写真〕
 個々の先はトゲ状にとがり先はほぼ真っ直ぐ〔上写真〕。熟すとばらけて落下して水面に落ちると浮いて流れる。7月ごろには茎や葉は枯れる。  
 キツネノボタンとの区別は、そう果の先がキツネノボタンのように鉤状に曲がっていない。〔左下写真〕小葉の裂片は重ならないなどで分かる。
 名前の由来は葉がボタンに似ていること、ケキツネについては、キツネボタンに似ているが全体に毛が生えていることによる。


   
     茎の開出毛と葉の基部
写真2009.5.17下石黒

    花弁の基部の鱗片(蜜槽)

写真2009.5.17下石黒

  ケキツネノボタンの果実

写真2009.5.14下石黒

 ケキツネノボタンの茎中空

写真2009.5.14下石黒

触ると粘液を出して付着する種子

写真2007.6.29下石黒